唇が残した淡い印は、
夜の肌にひっそり咲いた、名もなき花。

指先でそっとなぞるたび、
あの瞬間の記憶が、
眠っていた感覚まで連れて蘇ってくる。

鏡に映る淡い紅を見るたび、
唇が触れた瞬間を思い出してしまう。

もう消えかけているはずなのに、
記憶だけは鮮やかなまま。

消えてしまえば、この夜まで
夢だったように思えてしまうから――

私はその印を、
しばらく秘密のまま抱いていたかった。