待機所に自分の居場所を確保し、
荷物をセットして、
ゴロンと横になりながら日記を書いていた。
そうしているうちに、そろそろ時間。
ホテルへ向かおうと外へ出ると、
風さんがすぐに私に気づき、
隣に並んで歩き始めた。
「なんだか今日の風さんは生ぬるいわね」
でも、次から次へと風が吹いてくると、
その生ぬるさも気にならなくなってきた。
「さあ、私をホテルまで送ってくれる?」
「うん、いいよ。
でも終わるまで待っているのは
ちょっと退屈だから、
終わる頃にまた迎えに来るよ」
「そう? ありがとう」
そんな会話をしながら、
大通り公園を歩いていく。
公園の木々は今日も美しい。
そういえば、ここには早咲きの桜があった。
今はまだ青々とした葉を茂らせているけれど、
やがて季節が巡り、
年を越して春になれば、
また美しい花を咲かせてくれるのだろう。
なぜかその桜だけは、
ほかの木より少し特別扱いされているように、
柵で囲まれていた。
ほかの木たちは、どう思っているのかしら。
「やっぱり桜だけは特別よね」
なんて思っているのだろうか。
そんなことを考えながら、
一枚一枚の葉を眺める。
同じ緑に見えていた木々にも、
それぞれ違う葉があり、
それぞれに名前がある。
そんな当たり前のことに、
今頃になって気づいた。
でも、それがなんだかとても嬉しい。
きっと、風さんと一緒に
ゆっくり歩くようになったからだ。
そして、今日最初のドアが開きました。
優しく丁寧な物腰のあなたが、
にっこりと微笑んで迎えてくださいました。
オキニトークで
「予約したよ」と
メッセージをいただいていたから、
なんだかもう知っている人のような
気持ちで向かっていた。
それでも、今日初めて逢うあなた。
少し照れているように見えたあなたに、
ご挨拶代わりに私の方からそっと抱きついた。
あなたも私を抱きしめてくれた。
胸から伝わってくる鼓動。
身体から伝わってくるぬくもり。
初めて逢ったはずなのに、
その瞬間から少しずつ
距離が縮まっていくようだった。
仕事の話、お店の話、いろいろな話をした。
特に仕事の話では、
不思議なくらい同調するところがあって、
そこからどんどん話が
広がっていくことが楽しかった。
そして、二人の時間も
ゆっくりと深まっていった。
優しく、柔らかく触れながら感じる、
あなたの肌のぬくもりと胸の鼓動。
ふと振り向けば、そこにあなたの顔がある。
手を伸ばせば、
あなたのぬくもりに触れられる。
そんな近しい距離が、
なんだかとても愛おしかった。
それからも、いっぱいお話をしたわね。
……ほとんど私が喋っていたような
気もするけれど。
ふと、ピンク色のボトルが目に入った。
あっ。その瞬間、
大事なことを
すっかり忘れていたことに気づいた。
でも、気づいた時にはもう遅い。
あなたは「いいよ、いいよ」と
笑ってくださった。
やっぱり私って、ドジなのね。
それでも、あなたの優しく
温かな笑顔を見ていると、
そんな私も含めて、
私らしくいられた時間だったような気がした。
ありがとう、あなた。
また逢えることを、楽しみにしています。
あなたとお別れしてホテルを出ると、
風さんが本当に迎えに来てくれていた。
「すごく嬉しそうな顔をしてるわよ。
いい時間を過ごせたみたいだね」
「そうなの。もう風さんは、
私の顔を見るだけでわかるのね」
じゃあ風さん、またあの場所へ行こう。
私が日記を書き終えるまで待っていてね。
書き終わったら一緒に戻ろう。
そして、また私が次に出てくるまで
待っていてね。
その時だった。
大きな、大きな風が私の身体をふわりと撫で、
そのまま空高く舞い上がった。
そして空をひと巡りするように舞って、
もう一度、私のところへ降りてくる。
まるで私の喜びを
一緒に喜んでくれているようだった。
風さんが、
歓喜の舞を踊っている。
風さん、歓喜の舞✨
勃つねで応援-
-
共有で応援