私の朝の、のんびりオアシス時間。
……のはずだった。

ところが最近、
どうもこのオアシス時間が忙しい。

なぜか。
答えは簡単。
日記を書くことに夢中になっているから。

朝、歩きながら見つけたもの。

風の音。
空の色。
雲の形。
水面の揺らぎ。
それを心の中で一度受け取り、
今度は言葉に乗せていく。

そして文章ができれば、
今度はその世界に合う画像を作りたくなる。
「もう少し明るく」
「この色じゃない」
「服は前回と変えたい」
「タイトル、見えなくなる」
なんて、気がつけば
画像の中の世界へまで入り込んでいる。

そして、ちょっと気分が乗れば短歌。
さらに心が大きく動けば長歌。
時には、「俳句って、こんな感じかしら」
なんて、見よう見まねで一句。

どれも専門家でも何でもない。
でも、それが面白い。

上手に作ろうというより、
その瞬間に心へ浮かんだものを、
違う形の言葉にしてみる。

それだけで、
同じ風景が少し違って見えてくる。

さらに寄り道まで始まる。
歴史の小径。
日本酒の小径。
甘味の小径。
そして最近は、森村探検隊。

今朝も馬車道を歩いていたら、
ふっと夢の扉が開いた。

馬車道。
馬車。……あ。シンデレラ。
そう思った瞬間には、
もう次の物語を考えていた。

明日の朝、
また少し早く歩いてみようかしら。

夜明け前の馬車道。
そこへ、かぼちゃの馬車が迎えに来る。
私はそれに乗って、夢の扉を開く。

そんな物語を書いたら面白そう。
どうやら最近の私は、
目の前のものを見ると、
そこからすぐ別の世界へ飛んでしまうらしい。

でも面白いのよね。
実際に起こったことを、
ありのままに綴る文章。
そして、自分の中に浮かんだ景色を、
まだ存在しない世界として
言葉へ変えていく文章。

同じ文字数を書いていても、
どうやら脳の動きはまるで違う。
想像の世界を言葉へ移すときは、
頭がフル回転する。

「この色」
「この風」
「この感じ」

心の中には確かにあるのに、
ぴったりの言葉が見つからない。

探す。
また探す。
ようやく見つける。

そしてまた次の景色が浮かぶ。
今朝、一度頭がショートしかけたのも、
きっとそのせいなのだろう。

でも最近は、そのフル回転さえ楽しい。
私はいったい、
お店に出勤するために横浜へ来ているのか。
それとも、日記を書くために来ているのか。
ときどき自分でもわからなくなる。

ふふ。

けれど、
お客様から、「日記、読んだよ」
「あの日記、よかったね」
「あの写真、すごくよかったよ」

そんな言葉をいただくと、やっぱり嬉しい。

ほとんど自己満足の世界なのかもしれない。
それでもいい。
今の私にとって、
この時間そのものがオアシスなのだから。

だから最近は、
新しい朝を迎えることが楽しみになった。
目が覚める。
靴を履く。
外へ出る。
そして大さん橋へ向かって歩く。

その一連の時間が、
一日の始まりの喜びになっている。

何か特別な出来事が起きなくてもいい。
感動は、
どこかに用意されているものではなく、
自分が見つけるものなのだと、
少しずつわかってきたから。

朝は歩く。
昼からはお店へ。
その合間には、
若様の青い炎にちょっと包まれて、
群青の世界へ寄り道。
そしてまた現実へ戻り、テレワーク。

頭は、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり。
手はスマホへ。
次はパソコン。
今度はボールペン。
そして、「あ、お腹すいた」と
朝ごはんをつまむ。

休んでいるんだか、
働いているんだか。
心を遊ばせているんだか、
脳を酷使しているんだか。
なんとも忙しいオアシス時間である。

それでも私は、
こんな一日を気に入っている。

心が少しずつなめらかになっていく。
余計なものを手放すたび、
限りなく透明へ近づいていく。

そしてその分だけ、
風にも、
光にも、
色にも、
以前より敏感になっている自分がいる。

ただ、ひとつだけ。
もっと時間があったなら。
そう思う。

もっと遠くまで歩ける。
気になった店の扉を開けられる。
前を通るだけだった施設の中へ入り、
その場所が積み重ねてきた時間を
自分の目で見られる。

今はまだ、「いつか」
そう思いながら通り過ぎている場所が
たくさんある。
でも、その「いつか」があることも、
案外楽しいのかもしれない。

行きたい場所。
食べたいもの。
覗いてみたい世界。
まだ見ぬものが残っているから、
次の朝が楽しみになる。

さて。そろそろ時計を現実へ戻そう。
今日は12時から。

ご予約くださったあなた。
ありがとうございます。
初めて逢いする方。
どんな方なのだろう。
どんなお話をするのだろう。

そして、あなたとの時間は、
今日の私の余白を
何色に染めてくれるのだろう。
そんなことを思うと、
また少し心が弾む。

創作のオアシスから、
今度は人と逢う時間へ。

もうすぐ、今日最初のドアが開く。
その向こうに待つ新しい色を、
私はちょっと楽しみにしている。

言の葉に
心遊ばせ
時忘れ
次なる扉
また色を待つ

— Morimura