森村さんという女性。
ひとことで表すなら、
自由奔放。前向きで、行動的。
そして、かなりアバウト。
周囲の人たちは、
おそらくそんな印象を持っているのだろう。
ところが、どっこい。
この女性、意外なほどマメなのである。
まず、相当なメモ魔。
手帳には、朝から晩まで予定がびっしり。
1時間刻み。
30分刻み。
細かいときには、10分刻み。
その横には、
用件や経過まで書き込まれている。
予定が変われば修正テープ。
書く場所がなくなれば、
消したところをまた利用する。
まるで手帳そのものが、
小さな作戦本部。
けれど、これには理由がある。
仕事で何か問題が起きたとき、
出来事を時系列に整理し、
正確に説明する必要があるからだ。
つまり、
アバウトに見えて、
記録だけは妙に正確。
そして、森村薬局。
これは実在する薬局ではない。
森村さんの小さな薬の管理室である。
病院で処方された薬を、
一日分ずつ小さなチャック袋に分け、
日付を書いて並べていく。
旅に出るなら、滞在日数分。
朝、昼、晩。
忘れないように、
きちんと準備しておく。
どうやら、この女性。
自由に生きるための準備には、
手を抜かないらしい。
そして、クーポン券。
興味のないものには、
まったく見向きもしない。
ところが、
お気に入りのお店の割引券となると、
話は別。
黄色いチラシに赤い文字。
あっ、サービス券!
すかさず切り取って、
財布の中へ。
そして、必ず使う。
コンビニの割引券も同じ。
必要なものは決して逃さない。
なんとも選択的な几帳面さである。
次に、アイロン。
森村さんは、
ハンカチを集めるのが好き。
そして、
そのハンカチに
丁寧にアイロンをかける時間も好き。
一枚ずつ、
しわを伸ばして、
きれいに畳んで、
引き出しへ。
クリーニングも大好き。
専用の箱に洋服を入れ、
宅配で戻ってきたら、
すぐに収納する。
さらに、クローゼットの整理。
暇さえあれば、
洋服を引っ張り出して、
畳み直す。
これは単なる片付けではない。
自分がどんな服を持っているのか、
もう一度確かめるためでもある。
すると当然、
始まるのが一人ファッションショー。
これはお食事用。
こちらはホテルのレストラン。
これは紅葉を見に行くとき。
鏡の前で着たり脱いだり、
組み合わせを変えたり。
おしゃれにも、相当マメなのである。
そして靴。
こちらも、なかなか手ごわい。
靴は箱に入れて保管。
しかも、
箱には中身がわかる写真まで貼ってある。
履いたら磨く。
磨いたら片付ける。
家族が履きっぱなしにした靴まで、
いつの間にか磨いてしまう。
けれど、そんな靴好きにも、
ちょっとした悲劇があった。
久しぶりに履いたミュール。
歩いている途中で、バカッ!
突然、ヒール部分が壊れ、
片足だけスリッパ状態!
あらまあ。
靴にも賞味期限があるらしい。
そして、冷凍庫。
油揚げは切って、一回分ずつ。
刻みネギも、水気を取って小分け。
ご飯は、きちんと量って約110g。
魚も一回分ずつラップに包む。
何がどこにあるか、
頭の中にも冷蔵庫があるらしい。
そして、毎晩続けている小さな習慣。
こちらは、まさに継続は力なり。
こうして眺めてみると、
森村さんは決して、
何にでも几帳面な人ではない。
興味のないことには、
驚くほど無頓着。
けれど、
自分が大切だと思ったことには、
とことん手をかける。
どうやら、この女性のマメさには、
はっきりとした好みがあるらしい。
さて、ここまでは「こまめ」のお話。
お次は「筆まめ」
森村さんは、
昔から手紙を書くことが好きだった。
若い頃、年長の方から教わったことがある。
目上の方から葉書や案内状をいただいたら、
返事は封書で差し上げること。
その教えは、
今も大切にしている。
春には桜。
初夏には新緑。
梅雨には紫陽花。
秋には紅葉。
冬には雪景色。
季節ごとの便箋、封筒、一筆箋。
気がつけば、
一年分の季節が引き出しの中に並んでいる。
そして、筆ペン。柔らかく流れるひらがな。
縦にすっと伸びる文字。
時候の挨拶にも、
できるだけ美しい大和言葉を使いたい。
用件だけなら、
短い文章で済むかもしれない。
けれど、
そこに季節の風をひとつ添えたい。
相手を思いやる言葉を、
そっと添えたい。
一筆には、一筆分の心がある。
だから、手紙を書くことが好き。
そして今は、
日々の心模様を綴ることにも、
すっかり夢中になっている。
やっぱり私は、
筆まめなのだろう。
さてさて。
最後に登場するのは、
枝まめ。
実は森村さん、
豆なら何でも好きというわけではない。
グリーンピースは苦手。
そら豆も苦手。
小豆も、どうも得意ではない。
ところが、
枝豆となると話は別。
これが大好き。
なかでもお気に入りは、
丹波の黒豆から生まれた枝豆、
紫ずきん。
そして、山形のだだちゃ豆もいい。
もちろん、
手軽にいただける枝豆だって、
なかなか侮れない。
けれど、
やっぱり一番は、
温かい枝豆。
湯気の立つ、
ふっくらとした大粒の枝豆。
そこへ、冷たいビールを一口。
あるいは、
お気に入りの地酒を、ぐいっ。
ああ、なんて粋なのだろう。
こまめに暮らしを整え、
筆まめに言葉を届け、
枝豆をつまみながら、
人生を楽しむ。
結局、私という女性は、
自由奔放なのか、
几帳面なのか。
どちらなのだろう。
きっと、どちらも私。
何もかも完璧にしたいわけではない。
ただ、
自分が好きなこと、
大切にしたいことには、
惜しまず心を注ぎたい。
それが、私なりのマメさなのだと思う。
こまめに生きて、
筆まめに綴り、
枝まめで乾杯。
ふふっ。
なんだか、ずいぶん私らしい。
結びの短歌|三つのまめ
こまめなる
暮らしの中に
筆を執り
枝豆つまみ
今日も笑まむ
— Morimura
こまめ、筆まめ、枝まめ――自由奔放な女の、意外な素顔✨
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