クッションの洗濯をした。
私の部屋には、直径60cmくらい、
高さは10cmあるかないかくらいの、
ふわふわした円形の座布団クッションがある。
床がフローリングなので、
部屋のアクセントになればと思って買った、
鮮やかなひまわりのような黄色。
とても気に入っている。
このクッション、実はなかなか忙しい。
テレワークをするときや、
ごはんを食べるときには、
テレビ台も兼ねている
少し大きめのテーブルの前へ。
メイクをするときには、縦長の姿見の前へ。
私の行動に合わせて、
左へ右へと平行移動している。
ところが、鮮やかな黄色だけに、
汚れがよく目立つ。
今日はその汚れがどうしても気になった。
外はいいお天気。
よし、洗おう。
そんなわけで、今日はクッションのお洗濯。
その洗濯が終わるのを待っていたから、
いつもより部屋を出るのが少し遅くなった。
洗濯機が止まったのは11:40。
まあ、今日はまだご予約もない。
慌てることはない。
とはいえ、12:00から出勤予定だから、
そろそろ出かけよう。
外へ出ると——待っていました、
と言わんばかりに、
風さんたちが私のそばへ集まってきた。
ずいぶん待たせちゃったね。
そう思いながら風を迎え、空を見上げた瞬間、
私の口から、ふっと言葉がこぼれた。
「ああ、風がとっても綺麗」
……あれ?今、私、何て言った?
風が綺麗?
なぜ私は、風さんと出逢って
「綺麗」なんてつぶやいたのだろう。
その理由を探すように空を見上げると、
たまたま一本の高い、高い木が目に入った。
こんな木、ここにあったんだろうか。
いや、確かに前からあった。
ただ、私が気にも留めていなかった
だけなのだろう。
気になってアプリで調べてみる。
「アメリカハナノキ」初めて聞く名前。
今日はまだご予約も入っていないし、
詳しいことは後で調べてみよう。
それにしても——「風が綺麗」
なかなかいい言葉だな。
自分の口から偶然こぼれた言葉なのに、
我ながらちょっと感心してしまった。
そんなことを考えながら歩いていると、
また大きな木を見つけた。
出勤時間はもうギリギリ。
のんびり写真を撮って、
木の名前を調べている場合ではない。
……のだけれど。
やっぱり、やってしまった。
パシャリ。アプリに表示された名前は——
「マンゴー」えっ?マンゴー?本当に?
さすがにこれは、
アプリが間違えているのではないだろうか。
もう一度撮ってみた。
今度は幹を中心に、パシャリ。
「ニワウルシ」……さっきと全然違う。
一体どちらが正解なの?
気になって、もう一度。
「サポジラ」
もう一度。
「ヤマモモ」
さらにもう一度。
「タイサンボク」……。
撮るたびに名前が変わる。
私の撮り方が悪いのだろうか。
それとも、
アプリ自身が悩んでいるのだろうか。
マンゴーから始まって、ニワウルシ、
サポジラ、ヤマモモ、タイサンボク。
ここまで候補が増えてくると、
もはや何を信じていいのかわからない。
これは後でAIに聞いてみよう。
そう思いながら、少し笑ってしまった。
それにしても、樹木の識別アプリ。
今日はちょっと頼りない。
再び歩き始める。
太陽の光。
澄んだ青い空。
そこに浮かぶ白い雲。
その空から降ってくるような風が、
高い高い木々の間を通り抜け、
葉を揺らしながら私のところまで届いてくる。
ああ。きっと、これだったんだ。
「風が綺麗」そう感じた理由。
風そのものは、目には見えない。
けれど、太陽の光を揺らし、
木の葉を揺らし、
髪に触れ、
肌を撫でながら、
そこにいることを教えてくれる。
青い空も、
白い雲も、
光も、
木々も、
そのすべてを連れて私のところへやってくる。
だから私は、風を見ていたのかもしれない。
歩いているうちに、
風は少しずつ生ぬるくなってきた。
それでも、
私の風さんがずっと周りにいてくれることが、
よくわかる。
なんだか、それだけで安心する。
さて。
ちょっとコンビニに寄ろうかな。
今は、パリパリした
小袋のスナック菓子が食べたい。
それから、昨日飲んで美味しかった
グリーンコーラも、
ちょっといただきたい気分。
……あれ?からあげクンは、
どこへ行っちゃったのかな。
まあ、いいか。
今、私の心が欲しがっているのは、
小袋のスナック菓子と
グリーンコーラなんだから。
今日の気分は、今日の心に聞けばいい。
風さんにも、
あとで香りだけは届けてあげる。
あなたは食べられないし、
飲めないもんね。
じゃあ、行ってくるわね。
またお仕事が入って、
私が外へ出ることがあったら、
そのときはよろしくね。
風さん。
今日一日、よろしく。
風が綺麗✨
勃つねで応援-
-
共有で応援