コンビニを出て、
買ったものをレジ袋に入れた。
すぐに戻る気にはなれなくて、
壁にそっと背中を預ける。
生ぬるい風が、
右から左へ通り過ぎていく。
頬を通り、
髪を揺らし、
そのまま心の中まで
通り過ぎていく。
目を閉じた。
朝、歩いたこと。
部屋で過ごした、静かな時間。
おいしかったパン。
待機所で眠った午後。
そして今、
私はここにいる。
目を開けると、
建物の切れ間に
ほんの少しだけ空があった。
けれど、ぼんやりしている。
いつもの建物も、
いつもの道も、
右を見ても、
左を見ても、
みんな、ぼんやりしている。
まだ夢の中にいるみたいだ。
私は何をしているんだろう。
どこへ行こうとしているんだろう。
いったい、
何がしたいんだろう。
答えは出なかった。
目の前の信号が
赤から青へ変わる。
また赤になって、
また青になる。
それでも私は、
そこに立っていた。
何度も風が来た。
電話が鳴った。
耳元で誰かの声がしている。
けれど、その声さえ
風に乗って、
右から左へ流れていった。
今の私の頭には、
何ひとつ留まらない。
何も考えたくない。
何もしたくない。
ただ、
ぼんやりしていたい。
以前の私なら、
こんな時間を
無駄だと思ったかもしれない。
何かをしなくちゃ。
どこかへ行かなくちゃ。
時間を大切にしなくちゃ。
でも今は、
少し違う。
何も考えない時間があっていい。
何もしない時間があっていい。
信号が何度変わっても、
渡らなくていい。
行き先なんて、
決めなくていい。
風の向くまま。
気の向くまま。
ぼやけた視界の向こうから、
足音が聞こえる。
車の音。
人の話し声。
そして、
頬を通り過ぎていく風。
景色はぼやけている。
空も、
街も、
行き先も。
それでいい。
私は今、
世界をはっきり見たいわけじゃない。
何かを見つけたいわけでもない。
ただ外へ出て、
風を感じたかった。
それだけだった。
私の大好きな風を。
目を閉じる。
世界はもっと、
ぼやけていく。
それでも――風だけは、
ぼやけない。
風だけは、ぼやけない✨
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