朝の風と語るウォーキングから帰り、
時間も確認せず、
いつものように熱いお風呂へ。
さあ、極楽オアシス時間。

……のはずだった。
でも今日は、
どうしてもやりたいことがあった。
頭から離れない。
謎の木の正体を突き止めたい。
お風呂を掃除し、
洗濯機を回し、
昼と夜のおにぎりを二つ作る。

そして、今朝撮り集めた写真を確認してた。
謎の木①、謎の木②。
それだけではない。
比較するために、
伊勢佐木モールで見つけた、
名前の分かっている木も撮ってきた。
コブシ。
シラカシ。
クロガネモチ。
カツラ。
木全体、葉、枝ぶり、ネームプレート。
これだけあれば、何か分かるかもしれない。

そもそもの始まりは昨日だった。
私は普段、
気になった植物を
植物判定アプリで調べている。
その判定を、
ずっと正しいものだと思っていた。

ところが昨日、
部屋を出てすぐの木を撮ると、
「アメリカハナノキ」と出た。
その隣の木は、「マンゴー」
え?こんなところにマンゴー?
最初は信じかけた。
でも、どう考えても気になる。
ここで実がなったら、
誰かに取られちゃうんじゃない?
そんなことまで考えながら、
もう一度撮った。

今度は、「ニワウルシ」
もう一度。
「サポジラ」
さらに、「ヤマモモ」「タイサンボク」……
ちょっと待って。
君はいったい、何の木なの?
撮るたびに名前が変わる。

AIにも相談してみた。
葉が不鮮明だから、
もっと近くで葉の表裏や枝を撮ること。
落ち葉があれば、
それも大きな手掛かりになるらしい。

こうして、
その木は私の「謎の木①」になった。
そして今朝。
今日こそ謎を解こうと外へ飛び出した。
ところが、階段を下りて真正面にある、
昨日「アメリカハナノキ」と
判定された木まで気になった。
本当にそうなの?
撮ってみる。
「クロガネモチ」
もう一度。
「ポルトガル月桂樹」
さらに二回。
どちらも「クロガネモチ」
昨日のアメリカハナノキは、どこへ行った?
こうして、こちらも、謎の木②に昇格した。

どうやら植物判定アプリを、
100%信じてはいけないらしい。

今朝は昨日のアドバイスどおり、
できるだけ詳しく撮影した。
謎の木②は葉に手が届いたので、
枝、葉の表、裏、そして幹に付いた識別番号。

謎の木①は高すぎて、葉には手が届かない。
仕方なく樹形や枝をできるだけアップで撮り、
識別番号も記録した。
すると足元に、一枚だけ落ち葉を見つけた。
緑から紅葉色、そして枯れ色へ。
三段階のグラデーション。
きっと、この木の葉だ。
そう思って、それも撮影した。

すべての資料をAIへ送る。

植物探偵、推理開始。

謎の木①は、拾った三裂の葉から、
「トウカエデではないか」
ただし、まだ確定できない。
謎の木②は、
「クロガネモチ説、かなり有力」おお。
少しずつ真相へ近づいてきた。
そして、もう一つ大きな手掛かりがあった。

木の幹に付けられた、
NAから始まる識別番号。
どうやら街路樹一本一本を
管理するための番号らしい。
ところが、一般公開されている
台帳は見つからない。
そこでAIから提案された。

「管理している土木事務所へ聞いてみたら?」
こうなったら、最後まで突き止めたい。

いよいよ、横浜市に答えを聞く編。
伊勢佐木町の街路樹を管理している
中土木事務所へ電話した。

「毎朝歩いているうちに、
街路樹に興味を持って調べているんです」
そう伝えると、
とても親切に対応してくださった。
二つの管理番号を伝える。
そして、ついに答えが出た。

 謎の木①――カツラ。え?思わず驚いた。
カツラなら、馬車道でもよく見ている。
では、あの三裂した落ち葉は?
そして、謎の木②――クロガネモチ。
こちらは予想的中。
やった。
さらに、NAから始まる番号は、
やはり街路樹一本一本を管理する
識別番号だということも分かった。
ただ、新しく工事が行われて
植樹された場所などでは、
まだ番号の振り分けが
追いついていないところもあるらしい。

こうして二本の謎の木は、
①カツラ
②クロガネモチと、無事に正体が判明した。
植物探偵、一件落着。
……と思ったのだけれど。
私は、もう一度あの写真を魅つめた。
謎の木①の足元で拾った、
三つに裂けた一枚の葉。
どうやら、カツラの典型的な葉とは
形が違うらしい。
AIも、その葉からトウカエデではないかと
推測していた。

ということは――あの葉は、
謎の木①から落ちたものでは
なかったのかもしれない。
どこか別の木から離れ、
風に乗って、ひらひら、ひらひら。

そして偶然、カツラの木の下へ舞い降りた。
私はそれを見つけ、
てっきりその木の葉だと思って拾った。

そう考えると、
なんだか一枚の葉にも物語がある。
どこから来たの?
どんな木から旅立ったの?
どれくらい風に運ばれて、
あの場所へ辿り着いたの?

二本の木の謎は解けた。
けれど今度は、一枚の葉の謎が残った。
これは、これでいい。
またひとつ、
追いかけたいものができたのだから。

風さんと語りながら。
いつもの道を歩きながら。
今度は、この一枚の葉が旅してきた道を、
ゆっくり辿ってみよう。
どうやら私の植物探偵は、
まだ終わりそうにない。