11:50、部屋を出た。
ギリギリかな。
そう思いながらエレベーターに
乗ったところで――しまった。
ゴミを忘れた。
丸一日、部屋に置いておくのは嫌だ。
仕方なく取りに戻る。
これで、また1分。

二階から一階へ階段を下り、外へ出る。
風さんが待っていてくれた。
でも、風さんより先に私の目が向いたのは、
目の前に立つ二本の木だった。

今朝まで「謎の木」だった二本。
土木事務所に確認して、
謎の木①はカツラ。
謎の木②はクロガネモチ。答えは出た。
……はずなのに。

私は、カツラを見上げた。
うーん。
高いところにある葉を魅つめていると、
どうしても今朝拾った三裂した葉に
似ているような気がする。
やっぱり、あの葉はこの木から
落ちたんじゃないの?

隣で風さんも腕を組み、
一緒になって首をかしげている。
「風さん、どう思う?」
「うーん。確かに、
葉っぱの先が三つに裂けているようにも
見えるよね」
「そうでしょ?」
二人で木を見上げる。
右へ首をかしげる。
左へもかしげる。
謎だわ。

やっぱり、謎だわ。……って、
こんなことをしている場合ではない。
お店へ行く時間が、
本当にギリギリなのだ。
急がなくちゃ。

歩き始めても、
頭の中ではまだ植物探偵が続いている。
そうだ。
明らかにカツラだと分かっている木と、
もう一度比べてみればいい。
カツラ、どこにあったかな。

伊勢佐木モールにもあった。
馬車道にもあったような……。
いや、あれはイチョウだったかな。
そういえばカツラって、
ハート形の葉じゃなかった?

今まで歩いてきた朝の映像を、
頭の中でぐるぐる巻き戻してみる。
……分からん。
やっぱり、あの一枚は謎の葉だ。
これは明日から、もう一度調べなくては。
ね、風さん。
「そうだね。また一緒に探そう」

それにしても今日は暑い。
日差しも強い。
外へ出るのが嫌になりそうなくらいだけれど、
風さんがそばにいるから、
ほんの少し救われる。

そうだ。
今日も、コンビニで小袋のお菓子を買おう。
パリパリ食べながら、
この日記をまとめよう。

……あれ?そういえば、
私のからあげクンはどこへ行った?
あんなに張り切っていたのに、
最近すっかり影が薄くなっている。
まあ、いいか。
それでは風さん。
私はお店へ行ってくるね。
ここで待っていて。

そしてホテルに行く時に、また迎えに来てね。

13:00〜ご予約くださったあなた、
いつも、ありがとうございます。
お久しぶりにお逢いできることが、
すごく嬉しい。
真夏の昼下がりの夢をみたいな。