さて、本日の森村探検隊。
今回の目的地は、ずばり——
「味のとんかつ 丸和」
名前は知った。
場所もだいたい聞いた。
ならば、行ってみようではないか。
こういうときの私は、俄然楽しくなる。
地図を見れば、おそらくすぐにたどり着ける。
けれど、それでは探検にならない。
あっちかな。
こっちかな。
自分の目で看板を探しながら歩く方が、
ずっと面白い。
目印は、茶色いローソン。
そこを右へ曲がって——六道の辻。
なんとも探検隊心をくすぐる名前ではないか。
「六道」と聞いただけで、
道の向こうに何かが待っていそうな
気がしてくる。
さあ、ここからが捜索開始。
きょろきょろ。
右を見る。
左を見る。
まだ朝早いから、
店のシャッターはほとんど閉まっている。
けれど、閉まったシャッターにも名前はある。
ひとつずつ確かめながら進んでいくと——
あった。味のとんかつ 丸和。
見つけた。
シャッターはぴしゃりと閉まっている。
当然である。
今からヒレカツを食べよう
というわけではないのだから、それでいい。
今日はまず、場所を確認するのが任務なのだ。
それなのに、目的地を見つけた瞬間、
ちょっと嬉しい。
たった一軒のお店を見つけただけなのに、
「ここだったのね」と、
まるで小さな宝物でも
発見したような気持ちになる
。第一任務、完了。
……となれば普通は帰るところなのだけれど。
森村探検隊は、ここでは終わらない。
そうだ。
この辺りには十番館があったはず。
では、ついでに行ってみよう。
ところが——あれ?
どっちだったっけ。
こっち?いや、違う?
知っているつもりの横浜なのに、
一本道を変えると急に知らない街になる。
でも、これが面白い。
目的地へ一直線にたどり着くより、
少しくらい迷った方が探検らしい。
そう思って歩いていると、
今度は知らなかった
お蕎麦屋さんが目に入った。
あら。こんなところに、お蕎麦屋さん。
丸和を探していたはずなのに、
なぜか蕎麦まで拾ってしまった。
こういう予定外の発見に弱い。
十割かしら。
どんなお蕎麦なのかしら。
頭の中には早くも
小さな「蕎麦の小径」の種が
転がり込んでくる。
いやいや。
今日は丸和の捜索だった。
蕎麦はまた今度。
森村探検隊、任務続行。
そしてようやく十番館の辺りへ
たどり着いたところで、今度は足が止まった。
牛・馬の水飲み場。
えっ。
こんなものが、
こんなところに残っているの?
丸和を探して歩き始めただけなのに、
最後には昔の横浜へ入り込んでしまった。
かつてこの辺りを牛や馬が行き交い、
ここで水を飲んでいた。
今、自分が立っている同じ場所に、
まったく違う時代の景色が重なる。
こうなると、もう探検隊の目は忙しい。
とんかつ屋を探していたはずが、
お蕎麦屋さんを見つけ、
道に迷い、
最後には牛と馬の時代まで拾ってしまった。
どうやら森村探検隊には、
目的地だけを
見て歩くという才能がないらしい。
けれど、それでいい。
探検とはきっと、
探していたものを見つけることより、
探していなかったものに出逢うこと。
今日の目的地は丸和だった。
でも今日の収穫は、丸和だけではなかった。
一本曲がった道。
知らなかった店。
昔の横浜の小さな痕跡。
そして、「ここ、何だろう?」と
立ち止まった自分の好奇心。
それを全部、心のポケットへ。
というわけで——
本日の森村探検隊、任務完了。
次はもちろん、シャッターの向こう側へ。
そのときは捜索ではなく——
ヒレカツ実食隊になっているかもしれない。
道ひとつ
曲がれば知らぬ
朝に逢ひ
探すものより
拾ふものあり
— Morimura
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