白へ還る。

それは
消すことではなかった。

忘れることでも、
何も持たないことでもなかった。

歩いてきた色を
ひとつずつ胸にしまい、

それでもなお
新しい色を迎えられる場所を
残しておくことだった。

風が吹く。

私はもう
その風に答えを尋ねない。

どこへ行けばいいの、とも。

これでいいの、とも。

ただ、
髪を揺らす風を受けながら、

ああ、

今日も風がいる、

と思う。

海は何も言わない。

空も何も言わない。

けれど、

言葉のないものたちに囲まれていると、
心の中の余計な声が
ひとつ、
またひとつ、
静かになってゆく。

磨くということは、
輝かせることではなく、

曇ったときに
自分の手で
そっと拭えることなのかもしれない。

傷があってもいい。

迷いが残っていてもいい。

昨日の色が
少し滲んでいてもいい。

それも全部、私という白の中にある。

そして朝は、何事もなかったように
新しい光を連れてくる。

私はその光の中へ
一歩だけ足を出す。

何色になるかは、
まだ知らない。

知らないから、
今日がある。

白い心のまま、

風をひとつ連れて。

さあ。

今日という色に
逢いにゆこう。

— Morimura