あなたと別れて、ホテルを出た。
温かなお部屋の中で、
あなたのぬくもりに
長いあいだ包まれていたからだろうか。
身体はまだ、ぽかぽかと温かかった。
だから外へ出た瞬間、
ひんやりと頬に触れた夜の空気が、
とても心地よかった。
ああ。
今夜の私は、
きっとこんな空気を待っていたんだ。
雨が、
ぽつり、ぽつりと降っていた。
折りたたみの傘は持っていた。
させばよかったのだけれど、
なんだか今夜は、
このまま少し雨に濡れていたかった。
火照った身体に、
ぽつり、ぽつりと雨粒が落ちてくる。
そのひと粒ひと粒が、
今日、胸の中に抱いていたいろんな色を、
ゆっくり溶かしてくれているようだった。
空を見上げる。
漆黒の闇に、
淡い群青をひと刷けしたような空。
そのどこかから、
ほのかな光が射している。
月の光のように見えた。
今夜は残念ながら、月の姿は見えていない。
それでもきっと、
あの空のどこかで、
ひっそりと
神秘な輝きを放っているのだろう。
姿は見えなくても、
光だけは届いている。
そう思うと、
なんだか身体がふわふわと
宙を舞っているような気分になった。
歩いているのに、
足が地についていないような感覚。
なのに不思議と、
心だけはとても気持ちがいい。
この感覚、何なんだろう。
今日一日、
私はいろんな色を拾った。
その色をひとつずつ心の中へ染み込ませ、
そして今、
それらがゆっくり溶け合いながら、
白へと変わろうとしている。
私はこれから、
静寂の世界へ沈んでいく。
だから今、
こんなにも心地いいのかもしれない。
そして今夜、
ひとつ気づいた。
静寂の闇へ沈む、その少し手前。
そこは、群青色だったんだ。
白へ還る前に、
私はいったん群青の中を通る。
なんだか、
かなりのこじつけのような気もするけれど。
そう思った途端、
ふっと若様の青い炎が浮かんだ。
部屋へ帰って、眠る支度ができたら、
ほんの少しだけ、
若様の群青の世界へ
足を踏み入れてみようかな。
そんなことを思いながら歩いていく。
ふと見上げた、
私の小さな空。
やっぱり今、
私は群青の中にいる。
白が静寂の中へ沈んでいく、その少し前。
淡い群青の世界を、
私はふわふわとさまよっている。
眠るまでのほんのひととき、
この群青の中で、
心ゆくまでゆっくり時間を過ごそう。
……と言っても、
あまりゆっくりもしていられないけれど。
だって、
また明日も歩きたいから。
なるべくなら、
少しでも早く眠ったほうがいいものね。
今日一日、ありがとうございました。
そして今夜も、
私の中にたくさんの色を残してくれて、
ありがとう。
森村、
お部屋に着きました。
おやすみなさい。
雨ひとつ
群青ほどき
白へ還る
— Morimura
余話|白へ還る前、群青をゆく✨
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