大さん橋を出て、
ようやく心も地上へ舞い降りた朝。
いつもとは少し違う道へ右に曲がってみると、
そこに横浜市開港記念会館があった。
あることは知っていた。
けれど今までは、
「中を見てみたい」とまで
思ったことはなかった。
ところが今朝は、なぜか足が止まった。
入口の案内を眺める。
今日は月曜日。
どうやら休館日。
ふむ。
それなら今日は入れない。……となれば。
森村の頭の中で、
何やら別のスイッチが入った。
森村探検隊、出動計画開始。
開港と聞いて、
私が知っていることといえば、
歴史の教科書で習ったことくらいだ。
ペリーの黒船。
条約。
ハリス。
治外法権。
関税自主権。
覚えた単語はある。
でも、その時代、
この街にはどんな風が吹いていたのだろう。
どんな人が歩き、
どんな店が生まれ、
どんな匂いがして、
どんな音がしていたのだろう。
教科書には書かれていない、
教科書の向こう側。
それを、自分の足で覗いてみたい。
そう思った。
ならば探検日は、
朝のウォーキングを終えて一度部屋へ戻り、
10時頃、改めて出発。
まずは、かをり。
レーズンサンドを買う。
そこから横浜市開港記念会館へ。
ゆっくり40分か50分くらい、
館内を歩きながら
開港当時の横浜へ心を飛ばす。
そして11時半。
次なる目的地は――味のとんかつ丸和。
もちろん、ひれかつ。
人気店らしい。
小さなお店なら、
少し早めに並んだ方がいいのかもしれない。
歴史を学んだ直後にひれかつ。
この辺りで、
森村探検隊の知的探検なのか
食いしん坊探検なのか、
少々怪しくなってくる。
でも、まだ終わらない。
そのあと十番館。
あ。
そうだった。
あそこには、ビスカウトがある。
これも買って帰ろう。
となると、開港記念会館の休館日。
かをりの定休日と営業時間。
丸和の営業日。
十番館の営業時間。
それぞれ調べておかなければならない。
さらに、私の歩く時間。
館内を見る時間。
丸和に並ぶ時間。
そして14時にはお店へ。
……。
あれ?
森村探検隊だったはずなのに、
いつの間にか私、
森村旅行代理店まで開業している。
しかも添乗員、
企画担当、
時間管理、
全部ひとり。
こういう計画を立てるのは嫌いではない。
むしろ好き。
企画書を作るように、
ここからここまで何分。
次はここ。
その次はこれ。
なんて考えていると、楽しくなってくる。
ただし問題がひとつ。
私はすぐに、「せっかくだから、これも」
を始める。
かをりも。
開港記念会館も。
丸和も。
十番館も。
そのうち、「あ、ここも寄れる」
「ついでにあそこも」となりかねない。
探検には、余白も必要。
そこは心しておかなければならない。
今回の横浜滞在は30日まで。
1日の始発で帰る。
となれば、今回の実行は少し難しい。
だったら次の横浜。
あるいはその次。
まずは探検日を一日決める。
そして綿密なタイムスケジュールを作る。
朝のウォーキング。
かをり。
横浜市開港記念会館。
丸和のひれかつ。
十番館のビスカウト。
歴史を見て、
歩いて、
食べて、
甘いものを持ち帰る。
なんだか、とてもいい。
題して、森村探検隊|
開港浪漫、歴史と美味をひとめぐり。
ふふ。
これはなかなか楽しそうだ。
そんな秘密作戦を頭の中で練りながら、
「そうだ、今日は六道の辻を
もう少しゆっくり歩いてみよう」
と思っていた。
……はずだった。
ところが、森村探検隊と
森村旅行代理店の打ち合わせに
夢中になりすぎて、
六道の辻を見るのを、すっかり忘れた。
探検とは、
予定通りにいかないところまで含めて、
探検なのかもしれない。
開港の
浪漫を胸に
街めぐる
歴史と美味を
ひとつ拾いて
— Morimura
森村探検隊|開港浪漫、歴史と美味をひとめぐり
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