4時56分。
朝から雨は、静かに降り続いていた。
傘がなければ、きっとかなり濡れる。
けれど、激しく打ちつけるほどではない。
ポツポツポツポツ。
その音が、今朝の空気によく似合っていた。
私はいつもの二本の木を魅つめる。
餅おじさんは、
雨粒をいっぱいに受けながら、
すくっと、どっしりと立っていた。
深い緑はさらに深みを増し、
雨に濡れた葉はつややかに光っている。
隣のなぞちゃんも、
このところ少し元気を取り戻してきたように
魅える。
若い緑が雨を含み、鮮やかに息づいていた。
人は雨を嫌がるけれど、
木々はこんな雨を待っているのかもしれない。
そして人にも、雨を待つ朝がある。
私にとって今朝は、そんな朝だった。
しっとり濡れた景色。
静かな雨音。
少し冷たい風。
それらが、眠っていた感覚を
ひとつずつ起こしていく。
最初は、せっかく乾かした靴を
濡らさないようにと気をつけて歩いていた。
けれど、だんだん風景の方が気になってくる。
濡れないように。
濡れないように。
そう思っていたはずなのに、
いつのまにか心は先へ先へと歩いている。
雨は、ただ空から降ってくるものではなく、
今朝の私の感覚を静かに研ぎ澄ませていた。
そしてまだ明けきらぬ空の下で、
今日という一日のための小さな扉が、
ゆっくりと開き始めていた。
特別連作 水平線の向こうには|第一章 雨、緑を目覚めさせる
勃つねで応援-
-
共有で応援