夢の続きを、もう少しだけ――。
なんて言っていたら、
どうやら少し追いかけすぎてしまったみたい。
メールの着信音で目が覚めた。
時計を見て、一瞬で目が覚める。
「やばい、3分前」
少し遅れるかもしれない。
そう思いながら慌てて支度をして、
ホテルへと向かった。
今日は出勤してから、
ずっと待機所の中にいた。
だから外へ出るのは、これが初めて。
朝からずっと白いままだった私の余白に、
ようやく色をつけられる。
そんな気がしていた。
でも――。
よく考えたら、
もうその余白には、
若様の世界の群青色が
ずいぶん入り込んでしまって
いたのかもしれない。
そして、本日、最初のドアが開きました。
「久しぶり」そう言いながら、
優しく包み込んでくださるような笑顔で
迎えてくださったあなた。
本当に久しぶり。
嬉しいわ。
「今日はグッドタイミングの時に
来てくださったわ」
「なんで?」
「だって今日、あなたが一番最初なの」
「嘘だろ」
そんなことを言いながら、
いつものように、
たわいもない話を重ねていく。
でも、
あなたの顔を魅つめているうちに、
ああ、本当に逢えたんだな。
その喜びが、
少しずつ実感へと変わっていった。
「逢いたかったよ」
「私もよ」
そう言いながら抱きしめ合う。
久しぶりに触れるあなたの温度。
私の手が、
そっとあなたに触れていく。
あなたが感じてくださっていることが、
いつの間にか、
私自身の喜びにもなっていた。
久しぶりに逢えたあなたに、
私は夢中になっていた。
そして、
たくましい腕に抱きしめられながら、
今度はあなたと一緒に、
群青の世界へと沈んでいく。
そこはきっと、静かで、
熱く、胸の奥では
赤銅色の炎が揺れているような、
大人の恋の世界だったのだと思う。
「また、待っていますね!」
「また時間作って逢いに来るよ」
そう言葉を交わして、
あなたとお別れした。
ホテルを出る。
外へ出た瞬間、
思わず足が止まった。
空が、
すっかり透き通るような
群青色に染まっていた。
上だけではない。
街も、
灯りも、
風さえも、
あたり一面、
美しい群青色の世界。
そして――。
ホテルを出て、ひとり帰る夜道。
さっきまで
誰かと過ごしていた
時間の余韻をまとったまま、
私は歩いていた。
そのとき、不意に風が通り抜けた。
少し冷たいのに、不思議と怖くない。
顔を上げる。
街灯の向こう、群青と漆黒の境目に、
長身の誰かが立っていたような気がした。
黒でもなく、銀でもなく。
夜の色をまとった人。
一瞬だけ、こちらを見たように思えた。
――風さん?
けれど次の瞬間には、
そこにはもう誰もいなかった。
私はもう一度、
群青の空を見上げた。
夢の中でさまよっていた群青。
あなたと過ごした、
熱を帯びた群青。
そして今、
夜の街を包み込んでいる群青。
今日はどうやら、
余白に色をつけるどころか、
私自身が、
すっかり群青の中へ
染まり始めているらしい。
でも、
それも悪くない。
むしろ今夜は、
もう少しだけ。
この美しい色の中を
歩いていたいと思った。
夢醒めて
逢瀬の熱を
抱く夜に
群青の風
我を連れゆく
— Morimura
夢の余白、群青に染まりゆく✨
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