何もない。

そう書くと、
少し寂しく聞こえる。

でも今日の「無」は、
空っぽという意味ではない。

まだ、
何も決まっていないということ。

まだ、
何色にも染まっていないということ。

今朝、
私は自分の空を白にした。

予定も白。
心も白。
これから何が起こるのかも、
まだわからない。

そして午後、
その白い空には、
薄いグレーのような、
淡い紺色のような雲が浮かんだ。

白は、
何もない色ではなかった。

これから何色でも迎え入れられる、
余白の色だった。

だから今日、
私が書きたい一文字は――「無」

無いからこそ、
入ってくるものがある。

予定が無いから、
突然の出逢いが入ってこられる。

答えが無いから、
自分で考えることができる。

色が無いから、
どんな色にでも染まることができる。

言葉が無いから、
風の音が聞こえる。

そして、
何も起こらない時間にさえ、
心は静かに動いている。

「無」は、
ゼロではない。

むしろ、
これから何かが生まれる直前の場所。

筆を置く前の白い紙。

音が始まる前の静寂。

誰かが扉を開ける前の、
ほんの一瞬の気配。

今日の私は、
そんな「無」の中にいる。

無理に埋めなくていい。

急いで色をつけなくていい。

何かがやってくるまで、
白いままでいる時間も、
きっと必要なのだと思う。

そしてもし、
今日が最後まで白いままだったとしても。

それは、
何もなかった一日ではない。

白という色を、
ちゃんと味わった一日。

余白を、
余白のまま抱いていられた一日。

だから私は、
今日の「無」を
少し好きになっている。

無きところ
風入りきて
色を置く
白き余白に
今日が生まれる

— Morimura