予定よりずいぶん早く、目が覚めた。

もう一度眠ろうか。
そんな思いもよぎったけれど、
せっかく目覚めたのだからと、
私はまだ眠っている街へ歩き出した。

玄関のドアを開けると、
中庭の木々が夜の灯りに照らされ、
大きく揺れていた。
どうやら今朝は、風さんも元気らしい。

そして、ふと空を見上げた。

群青。

どこまでも深く、美しい群青の世界。

そこに、ひときわ輝く星があった。
白く澄んだ光。
その輝きを追いかけるように、
もうひとつの星を見つけた。 

こちらは、ほんのり黄金色。

少し離れた場所から、
二つの星が静かに魅つめ合っている。

ああ、なんて美しいのだろう。

私はいつの間にか、
その黄金色の星に自分を重ねていた。

そして、白く輝くもうひとつの星には、
遠く離れた、あなたの面影を。

不思議なことに、
その「あなた」は、ひとりではなかった。

あるときは、逢える日を待ちわびる人。
あるときは、少し甘えん坊で、
思わず笑ってしまうような人。
あるときは、言葉を交わすたび、
新しい世界を魅せてくれる人。
あるときは、何も語らずとも、
心をそっとほどいてくれる人。
そして、あるときは、
遠い記憶の中で、
今も大切に想い続けている人。

けれど、黄金色の星はいつも私。

その光だけは、変わらない。

やがて群青の空には、
小さな星々がいくつも姿を現した。

まるで二つの星のランデブーを、
そっと見守るように。

そして、夜明けの空には、
細く美しい有明の月。

その静かな輝きが、
群青の世界に、
もうひとつの余情を添えていた。

恋とは、
必ずしも誰かと結ばれることではない。

誰かを想い、
胸がときめき、
その人の前では、
ほんの少し素直になれること。

甘えたい私。
凛としていたい私。

その二つの心を行き来しながら、
私は今日も歩いている。

人生の道は、
ずいぶん曲がりくねってきた。
寄り道もした。
立ち止まったこともあった。

けれど、
心だけは、いつもまっすぐでいたい。

そして、今朝。

そんな私の心模様を映すように、
群青の空で、
二つの星が恋をしていた。

激しく燃え上がる炎ではない。

静かに、艶やかに、
淡い桃色の炎を灯すような恋。

静謐、幽玄、そして余情。

そのすべてをまとった朝の空が、
私をやさしく包んでいた。

私は、もう一度星を見上げた。

ねえ、あなた。
今朝も、私の光は届いているかしら。

そして、そっと歩き出した。

群青の向こうに、
新しい一日が待っている。


群青に
ふたつの星の
恋灯り
凛と艶めく
有明の月

— Morimura