第二部|群青鏡に映る朝〜星の輝きと、女王様のティータイム〜
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そして私は、お風呂に入った。
けれど、どうしてももう一度、
オリオンのベルトと剣に逢いたくなった。
湯上がりのまま、
そのままベランダへ出る。
すると、そこに今朝の星空が、
もう一度静かに広がっていた。
オリオンが魅えた。
ベルトが魅えた。
剣が魅えた。
大星雲も魅えた。
そして冬の大三角形も、
その周りに散りばめられた小さな星々も、
確かにそこにあった。
ああ、早起きしてよかった。
昨夜、星に願いをと思いながら
眠りについたけれど、
その願いは、こんなにも早く
今朝のうちに叶えられてしまった。
あのオリオンのベルト。
その神秘の輝きには、
ただ美しいというだけではない、
もっと深い何かが
秘められているような気がした。
まるで、ギリシャ神話に語られるような、
遥かな昔の物語が、
あの三つの星のあいだに
そっと息づいているようだった。
こんなに心惹かれるのだから、
今日、和歌山へ向かう途中にでも、
その物語を少し調べてみたい。
そんなことを思いながら、
ふと私は、
自分がまだ湯上がりのままだということに
気づいた。
まあ、でもいいか。
早朝だから、誰も見ていない。
それに、湯上がりの汗を冷ますには、
こうして外の空気に触れるのが
いちばん手っ取り早いのだということを、
私は今朝、ようやく知った。
そんな小さな発見さえ、
なんだか可笑しくて、
ちょっと嬉しい。
部屋へ戻ると、
久しぶりにポットのお湯を沸かした。
ドリップで淹れるホットコーヒー。
そういえばこのところ、
ずっとアイスコーヒーばかり飲んでいたから、
こうして湯気の立つ一杯を手にするのは、
本当に久しぶりだった。
そして、横浜十番館のビスカウトを一枚。
チョコレートの、ほんのりやさしい甘さ。
そこへ重なる、
コーヒーのほろ苦い味わい。
星の輝きを胸に残したまま味わう、
この夜明け前のティータイム。
私の心は、
それだけで十分すぎるほど
満たされていた。
なんと優雅な早朝のコーヒータイムだろう。
まるで、
ほんのひとときだけ
女王様にでもなったような気分だった。
こんな朝を、
毎朝でも迎えられたらいいのに。
そう思うほど、
このひとときは静かで、
満ち足りていて、
美しかった。
それだけではない。
今朝はそのあと、
布団カバーも枕カバーも洗った。
着ていたものも洗濯した。
部屋の中を掃除し、
荷物も片づけた。
メイクも済ませた。
着替えもできた。
こうして一つずつ整えていくたびに、
旅立ちの前の気持ちまで
すっきりと澄んでいくようだった。
早起きは三文の徳というけれど、
今朝の私は、
まさにその言葉を
身をもって味わった気がする。
星に込めた願いが、
早速叶ったこと。
女王様の気分で、
優雅な早朝のティータイムを過ごせたこと。
そして、
布団カバーも枕カバーも洗い、
部屋を整え、
清々しい気持ちで
旅立ちの支度を終えられたこと。
どれをとっても、
今朝の私にとっては、
ただの三文どころではない、
もっと大きな贈りものだった。
この早朝の星空観測。
帰ってからも、
また続けてみたいなと思った。
もっとも、
毎朝3時前に起きるのは
さすがに少しつらいかもしれない。
でも、もし早く眠れたなら。
もし、またあの群青の鏡のような空に
逢えるのなら。
きっと私は、
また空を魅上げてしまうのだろう。
本当に、
私の大好きな群青の鏡に映し出された
星の世界は、
吸い込まれてしまいそうなほど美しかった。
あの神秘の大宇宙の風景。
今朝、確かにこの目で魅た
あの静かな輝き。
私はきっと、
この先も忘れない。
心の奥底に、
そっと大切にしまっておこう。