12時になったので、
会社へ出勤するために家を出た。

外は、ものすごく暑い。
ただ暑いだけではなく、
まとわりつくような蒸し暑さで、
少し歩いただけなのに、
汗がだらりと流れてくる。

歩く距離はほんのわずか。
それでも、今日はその少しが、
とても遠く感じられる。
早く地下へ潜りたい。

そんなことを思いながら歩いていると、
ふと、今すっかり夢中になっている
ショートドラマとの出逢いを思い出した。

写メ日記に写真を添えるとき、
モザイクをかけたり、
画像を圧縮したりするために、
無料のアプリを使っている。
とても便利で、
いつもありがたく
使わせてもらっているけれど、
無料である以上、
少しだけ悩ましいこともある。

それは、何回かに一度、
広告が表示されること。
静止画の広告なら、
閉じるボタンを押せばすぐに終わる。
けれど、動画広告は少し厄介だ。
何秒間か、 
じっと終わるのを待たなければならない。

あるとき、待っているのが面倒になり、
別の画面を見て時間をつぶしていた。
そろそろ終わっただろうと思って、
画像圧縮アプリに戻ってみると、 
動画は途中で止まったまま。

どうやら、その画面を
きちんと見ていなければ、
広告の時間も進まない
仕組みになっているらしい。
「やっぱり、よく考えられているわね」
そう感心しながら、
仕方なく画面を見つめていた。

そのとき流れてきたのが、
TikTokのショートドラマだった。
最初は、まったく興味がなかった。 
見たくて見ているわけではなく、
広告が終わるまで仕方なく眺めていただけ。

ところが、途中から、
「あれ? この動画、
なかなか面白いじゃない」と思い始めた。
そして次の機会に、
また同じ動画が流れてきた。
今度は、偶然ではなく、続きが気になった。

「これ、最後まで見たい」
そう思ってネットで検索してみると、
YouTubeにもあるらしい。
早速見てみると、10話まで公開されていた。

夢中になって見続けたけれど、
よりによって、
いちばん気になるところで
10話が終わってしまった。
よく見ると、その物語は全部で46話。
ここまで見てしまったら、もう止まれない。

どうしても続きを見たい。
絶対に、最後まで見たい。
あちこち探して、
ようやく全話を見ることのできる
有料サイトを見つけた。
それが、今、私がすっかりハマっている
ショートドラマとの出逢いだった。

始まりは、見たくもなかったTikTokの広告。
それが今では、一日の終わりに待っている、
小さなご褒美になっている。

課金してまで見つけたことが、
良かったのか、悪かったのか。
知らないままでいたほうが良かったのか。
それとも、知ってしまったからこそ、
毎晩ときめき、
感動できるようになったことを
喜ぶべきなのか。
今のところ、答えは分からない。

けれど、今夜もきっと、
続きを見るのを楽しみにしながら
過ごすのだろう。

さて、そのご褒美を
心置きなく楽しむためにも、
まずは今日の仕事を頑張ろう。

蒸し暑い街を急ぎ足で抜け、
私は涼しい地下へと潜っていった。