長い一日が終わろうとしている。

今日を振り返ると、
ずっと現実と夢のあわいを
歩いていたように思う。

朝の馬車道では、
いつもの景色に文明開化の風を重ね、
ほんの15分だけシンデレラになった。

かぼちゃの馬車。
差し出された紳士の手。
きらびやかな舞踏会。
もちろん空想なのに、
魔法が解けたあとも、
心にはドレスの裾がまだ揺れていた。

そしてその余韻は、
一日を通してどこかに残っていた。

人と過ごした時間には、
テラコッタ色の温もりを感じた。

眠って、目覚めて、また言葉を書く。
そんな繰り返しの中で、
今日の私はずっと、
こぼれ落ちる心の欠片を
拾っていたのかもしれない。

風を拾う。
色を拾う。
温もりを拾う。
夢を拾う。

そうして生まれた「言の葉拾遺」
という言葉も、
今日という一日にどこか似ている。

大きな出来事ではなく、
ふと心が動いた瞬間を、
そっと拾って残してゆく。

雨の中、次のドアへ向かったとき、
ふと「風さん、どうしているかなあ」
と思った。
その小さな思いもまた、
今日拾ったひとつの言の葉だった。

今日一日の物語は
最終章に入ろうとしている。

夢と現実。
人と過ごす時間と、ひとりの時間。
眠りと目覚め。

そのどちらかではなく、
その間を行き来するからこそ、
私は自分の心を
見つけているのかもしれない。

朝の魔法はもう解けた。
でも、
ガラスの靴を全部返す必要はない。

片方くらい、
心の奥に残しておこう。

また明日、
何でもない景色の中に、
新しい扉を見つけられるように。

「夢と現のあわい」

暁の
道に夢見て
風を聞き
ひととき我は
姫となる
魔法ほどけて
なお胸に
夢の裳裾の
揺るるなり
人の温もり
色となり
こぼれし心
拾いつつ
夢と現の
あわいこそ
我が歩む道と
知りにけり

反歌

夢の裾
濡らす秋雨
降る夜に
拾いし心
胸へ還さん

— Morimura