素敵なあなたと過ごした
余韻を胸に抱きながら、
風さんと楽しく、
あなたとの時間について語っていた。

そして、
ゆっくり日記を書こうと思っていたら、
次のご予約の時間が、
いつの間にか早くなっていたみたい。

「風さん、ごめんね。
私、さっきの素敵な時間を
今から日記にしたためるから、
そこでちょっと待っていてくれるかな?」
そうお願いして、
まだ胸に残っているドキドキ、
ときめきを一つひとつ言葉にしていった。

ちょっと遅れちゃうけれど、
もともとは30分後のはずだったんだから、
ちょっとぐらいいいわよね。
そんなことを思いながら日記を読み返すと、
また、あなたと過ごした
素敵な昼下がりが蘇ってくる。

「また会逢いに来るよ」
そうおっしゃってくださった
言葉を思い出しながら、
私も、またあなたが来てくださるのを
待っていますね。

そんなことを心の中で呟いて、
車の窓から流れていく街の風景を眺めていた。

そして、次のドアが開きました。
昨日からご予約くださっていたあなた。
どんな方なのかな。
楽しみな気持ちと、
ほんの少しの不安を抱きながら
ドアの前に立った。

中からお声は聞こえる。
ドアも開く。
なのに、
なかなかあなたの姿が見えない。
こちらも恐る恐る覗き込み、
あなたも向こうから
恐る恐るこちらを覗いているような、
なんとも不思議なご対面。

そして、ようやく目が合った瞬間――
二人で、なんだか笑ってしまった。
初めて逢ったはずなのに。

そこからは不思議なくらい、
会話のリズムが合った。
年齢もちょうどいい具合に合っている。
そして、気も合った。
お酒を飲むところも合った。
お菓子が好きなところも合った。

合う、合う、合う、合う。
四拍子揃っていたのではないかしら。
いや、もしかしたら
五拍子だったかもしれない。
そんなことまで可笑しくて、
また二人で笑った。

あなたも、一緒にお酒を飲みながら、
時折イチャイチャするのがいいと
おっしゃった。

それなら――
二人で赤ワインをグラスに注いで、乾杯。
イチャイチャ、イチャイチャ、イチャイチャ。
あなたが選んでくださった赤ワインは、
とても美味しかった。
お菓子も美味しかった。

そして何より、
あなたが面白くて、
おかしくて、楽しかった。
言葉を投げれば、すぐに返ってくる。
返ってきた言葉を受け取って、また私が返す。
会話のキャッチボール。

そしていつの間にか、
心までキャッチボールをしているようだった。
本当に不思議な時間だった。
初めてお逢いしたはずなのに、
2時間があっという間に過ぎてしまった。

気がつけば、赤ワインも一本、
きれいになくなっていた。
「次は2本ぐらいいるかな」
なんちゃってね。
また次にお逢いできることを、
楽しみにしています。

なんだかきっと、
またあなたには逢える。
そんな気がしながら、
あなたとお別れした。

お迎えの車は、まだ来ていなかった。
でも、ちょうどよかった。
ホテルの入り口に腰掛けて、
あなたと過ごした時間の余韻に浸る。

赤ワインで乾杯したときの、
ほんのりとしたほろ酔い気分。
二人で笑ったこと。
言葉を交わしたこと。
不思議なくらい、
いろんなものが「合った」こと。

車を待つこの時間は、
それらを日記にしたためるのに、
ちょうどいい時間だった。

すると、風さんがやってきた。
「まあ、またいい時間を過ごしたみたいね。
ワインを飲んで、ちょっとほろ酔いかな?」
あら。ワインをいただいたことまで、
風さんにはバレちゃったみたい。
「じゃあ風さん、私は車に乗って帰るけど、
あなたは車の後をついてきてね」
風さんは、楽しそうに答えた。
「わかったよ」

やがて、お迎えの車がやってきた。
私はまだ少し残っている赤ワインの余韻と、
新しい出逢いの余韻を胸に抱いて、
車に乗り込んだ。
その後ろを、
風さんが楽しそうについてきた。