5分遅れで、美容院に到着。
遅刻してしまった。……と思ったけれど、
準備のため中で少し待つことになった。
だったら、私の5分なんて
遅れたうちには入らない。

カットを済ませ、
今はカラー剤をつけて、しばし待ち時間。
周りには誰もいない。
よし。
こっそり日記を書こう。

とはいえ、
美容院で音声入力はさすがにできない。
久しぶりに指で、サクサク入力していく。
こちらのほうが誤字脱字ははるかに少ない。
でも、すっかり音声入力に
慣れてしまった今となっては、
……面倒くさい。

入り口に近い席だから、

ガラス越しに外がよく見える。
あ。
風さん。
外から、じっとこちらを
見ているような気がした。
「どんなふうに変わるのかな?」
そんな顔をしている。

もう少し待っててね。
私も、どんなふうになるのか楽しみだから。

そういえば、美容院へ向かう途中、
また太陽神が現れた。
朝に魅た姿とは違っていた。
大きく両手を広げ、
空にあるものも、
地上にあるものも、
この世界に存在するすべてを、
その大きなオーラで
包み込んでいるようだった。

いかにも太陽神らしい、雄々しい姿。
手をひと振りすれば、風が動く。
目を少し閉じれば、雲が流れる。
首をほんの少し傾ければ、光が差し込む。
そんな、さりげない仕草ひとつで
自然のすべてが動き始めるような、
偉大な神の姿を雲の中に魅た。

その大きな世界の中にいる私は、 
ほんの小さな、小さな存在。
木もそうなのかもしれない。
街の中に立つ、一本の木。
毎日その前をたくさんの人が通り過ぎる。

誰にも名前を呼ばれなくても、
何十年もの間、同じ場所で空を見上げている。
私はたまたま、その一本に足を止めた。
アプリで何度も違う名前を告げられ、
それが面白くて追いかけ始めた謎だった。
でも、調べれば調べるほど、
ただ正解を知りたいだけではなくなってきた。

あの木には、ちゃんと名前がある。
誰かが間違った名前で呼んだからといって、
木自身が変わるわけではない。
それでも私は、
名前を取り違えられた一本の木に、
本当の名前を返してあげたい。
いつの間にか、そんな気持ちになっていた。

きっと、謎の木①も、
それを望んでいるような気がした。