美容院にて。
また、待つ時間。
眠たい。
でも椅子だから、なかなか眠れない。
ずっと座っていると、
お尻も痛くなってくる。
ああ、退屈。

風さんも来ない。
外を見るのにも、もう飽きた。
これが海の景色なら、
いつまででも魅ていられるのに。
街の景色では、そういうわけにもいかない。

そんなことを考えながら、
ふと明日の予定を思い出した。
アイブロウサロンと、フェイシャルエステ。
確か、フェイシャルのあとにアイブロウ。
時間を合わせて予約したはず。
手帳にも、ちゃんと書いてある。

ちょうどその時、
アイブロウサロンから予約確認の
メールが届いた。
あれ?フェイシャルサロンからは来ていない。
嫌な予感。

私は、予約中の画面を開いてみた。
表示された文字は、あまりにも冷たかった。
「現在、予約中のサロンはありません」
……また、やっちゃった。
予約したつもりで、予約していなかった。

今までにも、何度かある。
お店まで行って、
「予約、入っていませんよ」と
言われたことさえあった。
今回は前日に気づいた。
それだけでも、
かなり進歩したことにしておこう。

急いで取り直そうとしたけれど、
明日は午後からしか空いていない。
明後日の10:00なら空いている。
でも明後日は12:00から出勤予定。
さらに、その次の日の始発で帰るから、
午前中には荷物をまとめておきたい。

うーん。いろいろ考えたけれど、
無理に詰め込む必要はない。
フェイシャルは、また来週以降にすればいい。
きっと予定を変更した時、
手帳には書いたのに、
肝心の予約をするのを忘れたのだろう。

でも、そのおかげで、
明日はアイブロウだけになった。
少しだけ、時間に余裕ができた。
予定が一つ消えた。
でも、何かを失ったような気はしなかった。
むしろ、少しの
余白をもらったような気がした。

焦って、無理やり
予定を詰め込まなくてもいい。
できた余白には、
その時の私がしたいことを入れればいい。

風さんと歩いてもいい。
少しゆっくり朝を過ごしてもいい。
何もしなくてもいい。
そう思うと、予約を忘れていたことさえ、
少しだけ悪くない出来事に思えてきた。

今日は14:00から出勤します。
まだ、ご予約は何もないです。
だから今は、
少しだけ空いた時間を抱えながら、
どんな出逢いが待っているのか、
楽しみに待っていよう。

やっと終わった。
美容院の外へ出る。
思いきり両腕を上げて、
ぐーっと伸びをした。

ああ、すっきりした。
その瞬間、風さんがやってきた。
ふわり。
新しく整った髪を、そっとなびかせる。
まるで、「涼しげな感じ、素敵だね」
と言ってくれているみたい。
「風さん、お待たせ」

さっきまで美容院の中で感じていた退屈も、
長い待ち時間も、
全部どこかへ飛んでいった。
そして、少しだけ軽くなった気持ちで、
また今日の続きを歩き始めた。