美容院が終わったのは、
予定より40分ほど遅かった。
まずい。
かなり慌てた。
お部屋へ戻り、
朝買っておいたサンドイッチを急いで食べる。
まだご予約はないから、
少しくらい遅れても大丈夫かな。
そんなことを思っていた、その時だった。
14:00から、ご予約。
しかも、お久しぶりのあなた。
わあ、嬉しい。
ありがとうございます。
こうなったら、一気にスピードアップ。
14:00には大通り公園近くの
ホテルへ行けるように急いで出勤した。
今日の居場所へ荷物だけ置き、
セッティングは後回し。
すぐにホテルへ向かう。
突然飛び出してきた私を見て、
風さんもびっくり。
でも、しばらくすると、
「よかったね。ご予約いただいたんだね。
私も一緒に行くよ」
そんなふうに言ってくれているようだった。
大通り公園を歩く。
今日は、かなりの風。
日傘が飛ばされそうになるくらい、
元気いっぱいに吹いている。
髪もブラウスも、風に遊ばれている。
「風さん、今日も元気いっぱいね。
今日も一日よろしくね」
そして、本日最初のドアが開きました。
迎えてくださったのは、
お久しぶりが、とても嬉しいあなた。
「うわ、ご無沙汰ぶり。元気やった?」
嬉しすぎて、思わず関西弁が飛び出した。
「久しぶりだね。1年以上ぶりかな」
そうおっしゃるから、
「いやあ、前回は確か、
旅行へ行ったお話を聞かせていただいたから、
1年は経っていないと思うけど……
それくらい久しぶりかな」
そんな話をしながら、
「いやあ、嬉しいな」
二人で再会を喜び合った。
お店へいらっしゃること自体も
お久しぶりだったらしい。
「だから、知っている人のほうが
いいなと思って」
そう聞いて、また嬉しくなった。
「そんな久しぶりの日に、
私を思い出してくださったなんて光栄だわ」
うふふ。
懐かしい話をしながら、
ゆっくりと時間が流れていく。
以前お会いしていた頃より、
どこか可愛らしく見えるあなた。
久しぶりだから、
少し緊張していたのかもしれない。
そっと触れていく。
そして、「横に来て」
そう言われて隣へ行くと、
ぎゅっと抱きしめてくださった。
優しい温もり。
ずっと以前から
呼んでいただいていた懐かしさ。
いろいろなものが、一度に胸へ戻ってきた。
楽しくて、穏やかな時間だった。
ありがとう。
また待っていますね。
「またね」そう言ってお別れした。
ホテルを出て、大通り公園を横切る。
まだ胸の中には、
再会の温かな余韻が残っていた。
いつもの場所で日記を書こう。
そう思って歩いていると――
電話が鳴った。
朝、問い合わせていた
街路樹を管理している部署の方からだった。
まさか。もう調べてくださったの?
そして、ついに答えが出た。
あの木は、ハナノキだった。
えっ。何度も変わった
植物判定アプリの答えの中に、
一度だけ「ハナノキ」があった。
ということは、アプリも、
まんざら全部外して
いたわけではなかったのね。
担当の方は、
とても丁寧に調べてくださっていた。
ストリートビューで場所を確認し、
写真を皆さんで見ながら
検討してくださったらしい。
そして、私が問い合わせたことをきっかけに、
管理しているデータベースの情報も
更新してくださるという。
なんだか、嬉しかった。
一本の木が、本当の名前を取り戻した。
そして私の中に残っていた最後の「?」も、
すっと消えた。
ああ、すっきりした。
でも、振り返ってみると、
答えが分かったことと同じくらい、
答えへ辿り着くまでの時間が楽しかった。
疑問を持つ。
調べる。
すると、また新しい疑問が生まれる。
立ち止まる。
葉を魅る。
木を見上げる。
今まで気づかなかったプレートを見つける。
人に尋ねてみる。
その一つ一つの途中で、
また新しい風景に出逢い、
新しいことを知り、
小さな感動を拾っていく。
もしかしたら、謎解きの本当の楽しさは、
答えそのものではなく、
答えへ向かって歩いている
時間にあるのかもしれない。
「ねえ、風さん。
結局、ハナノキだったのよ」
風さんが、ふわり。
私の髪を持ち上げ、ブラウスを揺らした。
「謎が解けて、すごく嬉しい。
でもね――謎を追いかけていた時間が、
いちばん楽しかったかもしれない」
また、ふわり。
ああ、気持ちいい。
風も。
そして、謎が解けた、この心も。 と思う。
さあ、今日の物語はまだ終わらない。
そして20:00からご予約くださったあなた。
ありがとうございます。
お久しぶりにお逢いできることを、
今からとても楽しみにしています。
今夜は、熱く、ときめいて。
まるで真夏の夜の夢を見ているような、
そんな時間を一緒に過ごせたらいいですね。
また一つ、心に残る夜になりますように。
お逢いできるのを、楽しみにしています。
謎が解けた午後✨
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