風さんと一緒に、
いつもの場所で日記を書いていた。
もう今日一日も終わりかなと思っていたから、
一日の終わりの日記も
途中まで書きかけていた。
気がつけば、一時間ほど経っていたみたい。
ちょっと時間をかけすぎたかな。
でも、風は涼しくて
とても気持ちがよかった。
途中で、ポツポツポツと
雨が落ちてきたけれど、
少しくらいしっとり濡れるのも
いいかなと思って、そのままそこに居続けた。
やがて待機所へ戻り、
少しずつ後片付けを始めた。
残り時間は、あと20分少々。
今日はもうこれで終わりだろうと思い、
久しぶりにショートドラマでも観ようと
イヤホンをつけた。
そのとき、メールの着信があった。
どうやら、お仕事が入ったみたい。
急いで、終わったらすぐに帰れるように、
今日一日の私の居場所をきれいに片付けた。
そして足早にホテルへと向かった。
風さんが、私のあとを追うように吹いてきた。「まあ、もう一つ最後のドアが開くのね。
よかったわね」
「そうね」
私も、少し笑いながら答えた。
そして、今日最後のドアが開きました、
初めてお逢いするあなたが、
素敵な笑顔で迎えてくださいまさた。
彫りの深い顔立ち。愛くるしい瞳。
そして、夏の日差しを
いっぱい浴びたような小麦色の肌。
男らしさと可愛らしさ、
その両方を持ち合わせたような、
年下の素敵なあなただった。
「すごく緊張してる」そう言いながら、
少し恥ずかしそうに、
途切れ途切れに話す姿が
なんともいじらしかった。
私の方から、そっとあなたに触れる。
すると、触れたところから伝わってきたのは、
あなたの鼓動だった。
ドキドキ、ドキドキ。
あなたが感じてくださっていることよりも、
その速い鼓動の方が、
私にははっきりと伝わってきた。
「緊張してる。すごく緊張してる」
あなたは何度もそう言った。
でも、あなたから返ってくるものは、
とても優しかった。
ひとつひとつに気遣いがあって、
その優しさに触れるたび、
私の心まで柔らかくほどけていくようだった。
そして、たくましい腕に抱かれながら、
あなたの温もりをいっぱいに感じた。
あなたの身体は、とても温かかった。
そして、あなたのお気遣いも、
あなたの心も、とても温かかった。
いろんな話ができたことも楽しかった。
初めてお逢いしたのに、
不思議と心地よい時間だった。
年下のあなたとのランデブー。
真夏の夜に、
ほんのひとときだけ見た、
ロマンティックな夢のようだった。
また、待っていますね。
あなたとお別れしてホテルの外へ出ると、
風さんが待っていてくれた。
「ごめんなさい。
私、またお腹空いちゃった。
やっぱりさけるチーズだけじゃ
足りなかったみたい。
今から食べるのはよくないんだけど、
ちょっとゆで玉子でも買ってくるわ」
そう言うと、風さんはくすくす笑うように、
私の周りをくるくると回った。
コンビニでゆで玉子を探しながら、
殻をむくのはちょっと面倒だな、
なんて思っていたら、
ちょうど殻をむいた状態のゆで玉子が
真空パックで売られていた。
「淡路島の藻塩仕立て」
なんだか、おいしそう。
殻むきのゆで玉子なんて
初めて買ったけれど、
日記を書きながら、さっそくひと口。
ぱくり。
お。
なかなかおいしい。
これ、また食べたいかも。
でも明日は、もう味付けゆで玉子を買ってある。まずはそれを食べて、
それでもまたお腹が空いたら、
このコンビニでこの殻むきゆで玉子を買おう。
そんなことを考えながら、
ひとりでニタニタしながら日記を書いていた。
すると風さんが、
そっと私の顔を覗き込むように吹いてきた。
真夏の夜の夢から戻った私を、
少し呆れながら、
それでも優しく魅つめているみたいだった。
「風さん、日記が書けたら
待機所に急いで戻ろう。
そして急いで、お部屋へ帰ろう」
長かった今日一日も、
今度こそ本当に終わろうとしていた。
真夏の夜、最後のドア✨
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