歩き出そうとした、そのときだった。
アラームが鳴った。
え?時計を見る。
4:30。
そうだった。
今日のアラームは
4:30にセットしていたのだ。

では、なぜ私はもう着替えも支度も終えて、
今まさに歩き出そうとしているのだろう。
朝、何で目を覚ましたのか、よくわからない。
アラームが鳴ったのか。
勝手に目が覚めたのか。
それとも一度アラームを止めて、
二度寝したのか。

目を開けたとき、時刻は4:05だった。
「やばい、遅刻!」
そう思って飛び起き、慌てて支度を始めた。
けれど途中で、ふと気づいた。
……あれ?
そんなに急がなくていいんじゃない?

ここ最近、
アラームをセットしているのは4:30。
少し前まで4:00に起きていたから、
眠ったままの頭だけが、
昔の時間へ戻っていたのかもしれない。

昨日眠ったのは、たしか2:37。
ほとんど眠っていない。
だからだろうか。
頭が重い。

けれど、その重たい頭の奥から、
薄ぼんやりと何かが浮かんできた。
夢を見ていた。
大空を飛ぶ夢だった。

空は青く澄み渡り、
白い雲がぽかり、ぽかりと浮かんでいる。
まるで子どもが描いたお絵かきのような空。
その空を、私は飛んでいた。
片方の腕をぐんと前へ伸ばし、
もう片方の腕を胸元で曲げて。
スーパーマン?いや、違う。
鉄腕アトムだ。

しかも、おかしなことに、
そんな勇ましい格好で飛んでいる
私が着たかったのは、
背中が美しく開いた黒いロングドレスだった。

アトムに黒いロングドレス。
どう考えても似合わない。
それなのに私は、そのドレスで飛びたかった。
風を受けて長い裾を
ひらひらとなびかせながら、
青い空をどこまでも駆け巡りたかった。

夢から覚めて、
朝一番に小さな隙間から見上げた現実の空は、
夢とはまるで違っていた。

空は灰色がかり、
雲は煙のように黒ずんでいた。
暗い空。
明るい空。
その二つの間に、
黒いドレスを着た私がいる。

もしかしたら夢の私は、
太陽とこの街との間を何
度も往復していたのかもしれない。

灰色の空を飛び越えて、
太陽のところまで行って、
両手いっぱいに光を抱えて戻ってくる。
そしてまた飛んでいく。

頭が重いのも、
昨日拾ったたくさんの景色や感動が、
まだ私の中に溶けきらずに
詰まっているからなのかもしれない。
心のどこかに残った、
少し嫌な思いも一緒に。

だったら今日は、
それも全部抱えて飛んでみよう。
黒いドレスの裾を風になびかせながら、
重たいものの角を一つずつ、
すうっと滑らかにしていこう。

空を越えて。
街角を越えて。
心の中の、まだ少し曇った場所も越えて。

太陽の光をひとつ持ち帰るたびに、
今日の空も、
私の心も、
少しずつ明るくなっていけばいい。

4:30。
アラームより先に、
私は今日へ飛び出していた。
なんちゃって鉄腕アトム。

さあ、今日の空は、
どんな続きを魅せてくれるのだろう。