そして、今日最後のドアが開いた。
ドアの向こうには、
かわいらしい笑顔のあなたがいた。

「え、嘘でしょ?」
顔を見た途端、思わずそんな言葉が出た。
「なんか、すごく若くない?」

明らかに若い方が迎えてくださると、
私はつい年齢を聞きたくなってしまう。
あなたは私の問いに、
「はい、若いです」と、
かわいらしい小さな声で答えた。

「え、いったいいくつ?」
教えてもらった年齢に驚き、
聞き間違いかと思って、
もう一度聞き直した。
「嘘でしょ?」
「そうなんです」
えっ!
もう驚き以外の何ものでもなかった。

「私、最年少記録を更新しちゃったわ」
そう訴えると、
あなたは少しはにかんだような、
でもどこか嬉しそうな顔をした。
「そうなんですか。
じゃあ、今までの最年少は
いくつだったんですか?」
「二十歳だったわ」

もうこうなると、私の中ではすっかり、
――お姉さんに任せなさい。
そんな気分になっていた。

「触れられて嫌なところがあったら、
ちゃんと言ってね」
そう優しく囁くと、
あなたはまた小さな声で、
「はい」と答えた。
その素直な返事がなんともかわいらしくて、
私はますます優しい気持ちになった。

そっと触れながら、
その反応を確かめていく。
あなたはとても素直で、
感じていることが
表情や仕草にそのまま現れるから、
私にもすぐ伝わってきた。

ぎゅっと抱きしめて、
頭をなでなで。
すっかり私がお姉さん気分に
なっていたはずなのに――。
あなたの腕枕で並んで話していると、
今度はあなたから、
「かわいい」と言われた。

あら。
その一言を、
しっかり嬉しく受け取っている私がいる。
そんな自分も、ちょっと可笑しかった。

ふと気になって聞いてみた。
「今日は、お店の人に
どんな好みを伝えたの?」
すると、あなたは思いがけないことを言った。

「いえ、違うんです。
森村さんを指名したんです」
え?一瞬、言葉が止まった。
驚いた。
でも、それ以上に嬉しかった。
若いあなたに驚かされたうえに、
最後にはそんな言葉までいただいてしまった。

これはもう「余韻に浸る」というより
――新記録樹立。
しかも、心の中では
金メダルまで首に
かけてもらったような気分だった。

どうやらあなた自身も
今まで知らなかった感覚を、
今日ひとつ見つけたらしい。
だから帰り際、
ちょっといたずらっぽく言った。
「開発者を忘れちゃだめよ」

するとあなたは、またあの素直な声で、
「はい。また来ます」と答えてくれた。
「私も、また逢えるのを楽しみにしているわ」

そうして、
心の中にぴかぴかの
金メダルをぶら下げた私は、
意気揚々と夜の街へ出た。

ゆっくり、ゆっくり歩いていると、
風さんがやってきた。
そして私の周りをくるりと回りながら、
何かを見つけたように言った。

「ねえ、あなた。
首にかけているもの、なあに?」
「うふふ。内緒」
でも、風さんにはやっぱり隠せない。
きっと私の心の中まで、
全部お見通しなのだ。

夜風が、とても気持ちいい。
「風さん、気持ちいいね」
そう言うと風さんは返事をする代わりに、
まるで私の胸元に輝いている
金メダルを覗き込みたいかのように、
そこへふわり、ふわりとまとわりついてきた。

仕方ないなあ、風さん。
そんなに見たいの?
でもね――これは、今夜の私だけの金メダル。