待機所の近くで車を降ろしてもらい、
しばらく外の風に当たりながら
日記を書いていた。
風さんに見守られながら書き終え、
日記をアップして待機所へ戻る。
軽めのお昼ごはんを食べながら、
ぼんやり考えていた。
今日で最後。
11日間の横浜ステイのこと。
そして、この間にお逢いした
あなたたちと過ごした時間のこと。
そんなことを思い返していると、
お店からメールが届いた。
お仕事が入ったみたい。
外へ出ると、
空はそろそろ日の入りの支度を始めていた。
昼間の強い日差しは和らぎ、
吹いてくる風が心地いい。
「風さん、気持ちいいね。
今日は大通り公園を突き抜けて歩こうか」
「そうだね」
大通り公園を歩いていると、
ベンチに座るおじいさんの足元に、
たくさんの鳩が集まっていた。
30羽くらいいただろうか。
「風さん、あのおじいさん、
いつも餌をあげているのかな。
それとも鳩たちがおじいさんのことを
好きなのかしら」
「もしかしたら、
毎日ここへ鳩たちに
逢いに来ているのかもしれないね」
そうなのかもしれない。
おじいさんを慕うように
集まる鳩たちの姿がなんとも可愛らしく、
胸がきゅんとした。
そんな小さな風景をひとつ心に拾って、
あなたの待つホテルへ向かった。
そして、次のドアが開きました。
「あっ……」嬉しい。
すごく、すごく嬉しい。
飛び上がりたいくらい嬉しかった。
お久しぶりのあなたが、
いつものダンディな姿で、
優しく迎えてくださいました。
「わあ、久しぶり。
逢いに来てくださって嬉しい」
「俺も逢いたかったよ」
「でも良かった。私、
今日が最後の出勤日だったの」
「そうだったのか。
じゃあ今日来て良かったよ」
その言葉が、また嬉しかった。
あなたとは、
私がお店に入って間もない頃からの
お付き合い。
だからだろうか。
しばらく逢っていなかったはずなのに、
久しぶりという距離を感じない。
何か特別な話をしなくても、
さりげなく言葉を交わしているだけで、
昔から続いている
会話の続きをしているような心地よさがある。
シャワーを浴びて、二人でゆっくり過ごした。
久しぶりに見るあなたの顔。
久しぶりに感じるあなたの温もり。
その表情や声を感じながら過ごしていると、
私まで嬉しくなって夢中になっていた。
「逢え嬉しいよ。気持ちいいよ。可愛いよ」
そう言いながら、
あなたがそっと頭を撫でてくれた。
何気ない仕草なのに、
それがとても嬉しかった。
今日、久しぶりにあなたに逢って、
初めて逢った頃のことを思い出していた。
あの日から今日まで。
何度も、何度も開いたドア。
その向こうで一緒に過ごしてきた時間。
私たちが少しずつ紡いできた物語が、
次から次へと心の中を駆け巡っていく。
気がつけば、
胸の中は溢れそうな思いで
いっぱいになっていた。
「また逢いに来てね」
「うん。またすぐに逢いに来るよ」
その言葉を心に残して、あなたと別れた。
ホテルを出ると、風さんが待っていた。
ふわり。
「なんだか嬉しそうね」
「そうなの。久しぶりに逢えたから。
初めて知り合った頃のことまで、
いろいろ思い出していたの」
「そうなんだ。いい時間だったんだね」
「うん。とっても」
長い時間を重ねたからこそ生まれる色がある。
初めて逢った日の鮮やかな色とは違う。
何度も逢い、
何度も言葉を交わし、
いくつもの時間を重ねて、
少しずつ深みを増していった色。
今日、私の心に加わったのは、
そんな、あたたかな琥珀色だった。
時を重ねた、琥珀色✨
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