待機所へ戻る頃に降り始めた雨は、
いつの間にか激しい豪雨になっていた。
しばらくして、また外へ出る。
少し弱くなったとはいえ、
まだかなりの本降り。
折りたたみ傘しかない。
足元、濡れちゃうだろうな。
「風さん……」心の中で呼びかけると、
すうっと風さんが
肩のあたりから胸元へ入り込んできた。
「雨、大変だね」
「ほんと。大雨は嫌だわ。
もう少し大きな傘だったらよかったんだけど」「仕方ないね。
あなたの近くに寄ってくる雨は、
僕が風で逃がしてあげるよ」
「ありがとう、風さん。いつも優しいね」
そんな会話をしながら、
雨の中を一緒に歩いた。
傘を打つ雨音。
濡れていく足元。
時折、
傘からはみ出した肩に落ちる冷たい雨粒。
それでも、風さんがそばにいると思うと、
少しだけ心強かった。
そして、あなたの待つホテルへ。
次のドアが開きました。
爽やかで優しい笑顔。
穏やかで、とても丁寧な言葉遣い。
そんなあなたが迎えてくださいました。
初めましての自己紹介を兼ねて、
いろいろな話をした。
ゆっくり言葉を交わしているだけで、
あなたの優しさが伝わってくる。
そして、お風呂へ。
ふと目に留まったのは、
きれいに日焼けした小麦色の肌。
その肌によく似合う、鍛えられた身体。
思わず胸がきゅんとした。
私自身も筋トレが好きだった時期があるから、
つい目がいってしまう。
ベッドへ移り、輝くような小麦色の肌へ、
そっと、優しく触れていった。
あなたは多くを語らなかった。
けれど、少しはにかんだような
表情を魅ていると、
ちゃんと感じてくださっていることが
伝わってくる。
それが嬉しかった。
そして今度は、あなたからのお返し。
優しく、ときには少し強く。
思わず声がこぼれた。
やがて、鍛えられた逞しい腕に優しく包まれる。その温もりの中で、
私はほんのひととき、黄金色に輝く、
心温まる夢を見ているようだった。
トレーニングの話も楽しかった。
「また、待っていますね」
そう言ってあなたと別れ、
ホテルの外へ出た。
あれ?雨が止んでいる。
さっきまでの本降りは、
いったい何だったのだろう。
ホテルへ向かうときは、
両肩を濡らし、
足元までびしょびしょになって、
歩くたびに靴がぐちゅぐちゅするのを
気にしながら歩いていたのに。
今は、清々しい風が吹いている。
雨上がり特有の湿った重さではなく、
ほんの少し秋へ向かっているような涼しい風。
「風さん、この涼しさ、
あなたのおかげでしょう。
雨で湿った空気を乾かしてくれているのね」
ふわり。
返事をするように風が頬を撫でた。
「ありがとう」
銀色の雨の中を歩いて、
その向こうで出逢った、小麦色。
そして心を包んでくれた、温かな黄金色。
今日の私の帯に、
また新しい色が織り込まれた。
「風さん、そろそろ日記も書き上がるから、
アップしたら一緒に待機所へ戻ろう」
次に外へ出るのは、たぶん21:30頃。
「それまで待っていてね」
そう言ってから、ふと思った。
また雨が降ったら、
風さんも濡れてしまうのかな。
「ねえ、風さん。
もしまた雨が降ったら……
私の傘、貸してあげようか」
雨上がりの風が、
ふわふわ、ふわふわ。
なんだか笑っているように、
私の髪を揺らしていた。
銀色の雨の向こうに✨
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