長い、長い一日。そして、今までで一番長かった11日間の横浜ステイが、終わろうとしている。今朝、私の目に映った空は水墨画のようだった。まだ何色にも染まっていない空。
何も描かれていない余白。それはまるで、
無になった私の心そのもの
だったのかもしれない。
そこから今日という一日が始まった。
前を向き、風さんと歩きながら、
心に響く風景を一つ、
また一つと拾っていった。
そして、何色も持たなかった心に、
少しずつ色がついていった。
最初の一色は、
朝の太陽が水墨画の雲に滲ませた
ピンクゴールド。
雲の世界から突然現実へ
引き戻してくれた警備員さんのブルー。
風にそよぐ木々の深い緑。
その合間に可憐に咲いていた花の黄色。
心の奥へ続く階段で思い出した、
ピアノの黒と白。
パンに挟まれたサーモンのピンク。
彩り野菜の赤、黄、緑。
真昼の太陽が降り注いだ、眩しい金色。
そして、夜の街を彩る無数の光。
今日の出逢いにも、それぞれの色があった。
初めての出逢いに胸を高鳴らせた時間は、
鮮やかで奥深い孔雀色。
そして、長い時間を一緒に重ねてきた
あなたとの再会は、
時を経たからこそ生まれる、温かな琥珀色。
そして、銀色の雨の向こうで出逢った、
輝くような小麦色。
その温かな腕に包まれて、
心まで黄金色に染められた時間。
最後のドアの向こうには、
夜の闇に浮かぶ赤銅色と黄金色の光があった。
その光を映した大きな瞳はきらきらと輝き、
温かな優しさに包まれながら、
私は真夏の夜の光の中へ
溶け込んでいくようだった。
一日の中で出逢った色は、
どれ一つとして同じものではなかった。
けれど、
そのすべてに共通していたのは、感動。
色彩を持たなかった心に、
感動という名の糸が一本、
また一本と織り込まれていった。
そして今。
私は、この世にたった一本しかない
帯を纏っている。
今日という一日。
そして、この11日間に心で受け取ったものを、一本一本の糸にして織り上げた、私だけの帯。
その帯に合わせて纏う着物は――「夕鶴」
深い闇のような黒。
その静寂の中に、
一羽の白い鶴が凛と立っている。
『夕鶴』のつうが持っていた、
何ものにも染められていない純粋な心。
ただひたすらに相手を慕い、
その思いを一枚の布へと織り込んでいった心。
私は、その純粋さを、
この横浜ステイで何度も求めた
「無」の心に重ねていた。
何かを手に入れようとするのではなく、
一度、心を空っぽにする。
無一物中無尽蔵。
何も持たない心だからこそ、
そこには無限のものを受け取る余白がある。
風景も、
旋律も、
人の言葉も、
出逢いも、
風さんの囁きも。
心を無にしたからこそ、
それらは私の奥深くへ入り込み、
やがて感動という色になった。
黒い着物の上で、
白い鶴が天空へ舞い上がっていく。
その姿を見ながら、
私は自分自身を重ねる。
この11日間で、いくつの殻を脱いだのだろう。ひとつ脱ぐたびに、
少しだけ自由になった。
またひとつ脱ぐたびに、
心の奥から放つ光が、
少しずつ明るくなった。
そしてこれからも、
いくつもの殻を脱いでいきたい。
やがて蝶が羽を広げるように、
感動という名の世界へ、
もっと自由に羽ばたいていきたい。
今日の私の物語も、
11日間の横浜ステイの物語も、
いよいよ最終章。
最後のページには、
どんな言葉を残そう。
きっと、難しい言葉はいらない。
ありがとう、あなた。
ありがとう、風さん。
ありがとう、
今日、私の心に色をくれた
すべての風景と出逢い。
朝には何色も持たなかった私の心が、
今はこんなにも
色鮮やかな帯を織り上げている。
だから、この帯を纏って、
今日の物語をそっと閉じよう。
でも、帯はここで織り終わるわけではない。
これから出逢う景色、
これから心を震わせる言葉、
これから生まれる感動。
そのたびに、
新しい一本の糸が加わっていく。
私はきっと、
この心色の帯をずっと纏い続ける。
さらなる色を重ね、
さらなる光を宿しながら。そしてまた、
まだ知らない明日の空へ。
心色で織り上げた帯✨
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