日曜日の早朝というせいもあるのか、
電車の中には人の姿がまばらだった。
降りた駅も、
まだ眠っているように静かだった。
そして、予定していた電車に無事に乗り込む。
座席の背もたれを倒し、
膝にブランケットをかけ、
深く身体を預けた瞬間――
ようやく、ふうっと息をつくことができた。
帰る朝はいつも
だいたい同じような流れなのに、
今朝だけは、
予定していた電車に乗れたことへの安堵が
いつもとはまるで違っていた。
昨夜、眠りについたのは
1:30を過ぎた頃だった。
アラームは3:00。
だから、ほんのわずかな
睡眠時間になることは覚悟していた。
ところが眠りについて間もなく、
突然スマホから大きな音が鳴り響いた。
驚いて飛び起きる。
「地震です」
そんな警報が聞こえた直後だったと思う。
大きな揺れが来た。
部屋が揺れる。
大きく、長く揺れている。
建物がミシ、ミシと音を立てるたびに、
次の瞬間、
どこかがバキッと
折れてしまうのではないかという恐怖が
押し寄せてきた。
次のミシで折れるのだろうか。
その次なのだろうか。
もし建物が崩れたら。
もし、このまま押しつぶされたら。
身体を起こすことさえできず、
ベッドの上で
じっと揺れが収まるのを待つしかなかった。
これほどの恐怖を感じた揺れは、
阪神・淡路大震災のとき
以来だったように思う。
揺れている間、
頭の中には次々と
後ろ向きな思いが浮かんできた。
このまま家族に
会えなくなってしまったらどうしよう。
横浜ステイをあと一日、
あと一日と
欲張らなければよかったのではないか。
昨日のうちに
帰っていればよかったのではないか。
そんな思いが、恐怖と一緒に
次から次へと湧き上がってきた。
やがて揺れは収まった。
そのまま再び目を閉じたけれど、
今度は別の不安が頭をもたげる。
新幹線は大丈夫だろうか。
朝、本当に帰れるのだろうか。
眠っているような、眠っていないような。
夢と現実の間をさまようような時間を過ごし、3:00。
重たい頭と、
開けるのも億劫なほど
重たいまぶたを連れて起き上がった。
テレビをつける。
どうやら新幹線は大丈夫そうだった。
それでも、
「もしかしたら何かあるかもしれない」
という小さな不安を抱えたまま、
お部屋を出た。
だからこそ今、
予定していた電車の座席に座り、
背もたれに身体を預けられたことが、
たまらなくありがたい。
身体中に張りつめていた力が、
一気に抜けていく。
いつもなら当たり前に思っていた、
予定どおり帰れること。
それが今日は、とても幸運なことに思えた。
ようやく心が少し落ち着いたのだろう。
お腹が空いてきた。
昨日の朝、
パン屋さんで買っておいた
彩り野菜のフォカッチャ。
そして残しておいたミニパン。
今日の朝ごはんにしようと
冷蔵庫に入れておき、お部屋を出る前に電子レンジで温めてきた。
まだ、ほんのり温もりが残っている。
さあ、コーヒーを飲もう。
温かなパンを食べよう。
昨夜からずっと張りつめていた緊張の糸を、
少しずつほどいていこう。
なんだか、
身体よりも先に心が疲れてしまったみたい。
車窓の向こうを見る。
風さんが、少し心配そうに
こちらを眺めているような気がした。
「風さん、もう大丈夫よ」
そっと心の中で声をかける。
「ご飯を食べて、元気になるわ」
車窓の向こうを流れていく朝の景色。
その景色を魅つめながら、
温かなパンをひと口。
今、私は確かに、帰る道の上にいる。
無事に帰るということ✨
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