目が覚めると、そこは横浜だった。

よく寝たなあ。
1時間までは寝ていないけれど、
40分くらいだったかしら。
アイマスクをつけたら、
あっという間に眠ってしまったみたい。
どうやら私の睡眠スイッチは、
アイマスクをつけることらしい。

眠っている途中、ふと腕に冷たさを感じた。
半袖のブラウスでは、少し寒い。
そろそろノースリーブや半袖の季節も
終わりなのかな。
暑い、暑いと言いながら過ごしているから、
いつまでも夏の中にいるような
気がしていたけれど、もう9月。
暦の上では、とっくに秋だ。

そういえば周りの自然の中にも、
あちらこちらに
小さな秋が顔を出し始めている。
さっきまで考えていた、季節の移ろい。
こんなところにも、ちゃんと来ていたんだ。

けれど、横浜に着いたというのに、
まだしばらく外には出られない。
早く地下鉄に乗り換えて、
最寄り駅で降りて、地上へ上がりたい。
早く横浜の風に当たりたい。
頭の中には『千鳥』が流れていた。
風が私を呼んでいる。
風さん、もう着いているかなあ。

地下鉄を降り、エレベーターに乗る。
上へ、上へ。
なんだかドキドキしてきた。
そして扉が開いた。
外へ出る。
ああ――。
5日ぶりの横浜だ。

私がいつもいる街の風景。
5日前と何も変わらない、いつもの風景。
そこへ風さんが駆けつけてきた。
ふわあ。ふわあ。
そして後から後から、
ふわ、ふわ、ふわ、ふわ。

どうやら私より先に横浜へ着いた風さんは、
海まで行って戻ってきたらしい。
横浜の風を連れて。海の香りを連れて。
風さん、ありがとう。
なんだか私、横浜そのものに
迎えてもらったような気がする。
嬉しい。すごく嬉しい。

風さんと一緒に、いつもの部屋へ向かう。
入口を挟んで立っている、
巡り木のふたり。
モチおじさんとなぞちゃん。
それぞれの葉を風に揺らしながら、
「おかえりなさい」
二人そろって、
そう言ってくれているように見えた。
嬉しい。すごく嬉しい。
「ただいま」私も心の中で応える。

そして部屋の扉を開けた。
そこには、
私が出たときのままの空気が残っていた。
何も変わっていない。
ただ、それだけなのに。
嬉しい。すごく嬉しい。

家を出るとき、あんなに名残惜しかった私。
向こうの街と横浜の間を、
潮の満ち引きのように
行ったり来たりしていた心。
でも今は、もう違う。
潮は静かに満ちたのだ。
私はちゃんと、横浜へ帰ってきた。

今日から9日間の横浜ステイ。
さあ、何が待っているのだろう。
なんだか楽しくなってきた。
わくわくしてきた。

ただいま、横浜。
今日からまた、私の横浜の物語が始まる。