目が覚めると、時刻は15時だった。

13時少し前から横になっていたから、
2時間ほどたっぷり眠ったことになる。

15時30分にアラームを
セットしていたけれど、
それが鳴る前に目が覚めた。
もう一度眠ろうかとも思った。
でも、なぜか目が冴えてしまったので、
日記を書くことにした。

お昼ご飯を食べてすぐ横になったせいか、
少し胃が重たい。
待機所にいると、
食べたあとにすぐ眠ることが多い。
本当はあまりよくないのだろうけれど、
狭いスペースだから動き回ることもできない。
食べ終われば、あとは横になるしかない。

いつもなら、
アイマスクをつけてから眠りにつくまでに、
いろんなことを考えていることもある。
でも今日は、
何を考えていたのかさえ思い出せない。
きっと、こてっと
すぐ眠ってしまったのだろう。

目を覚ますと、待機所には音楽が流れていた。
何の曲なのかはわからない。
でも、ここではいつも
いろんな曲が流れている。
長く待機していると、
同じ曲を何度も耳にすることもある。

そうやって私は、
知らないうちに新しい音楽を
耳で覚えているのかもしれない。

私のお気に入りになった「千鳥」も、
きっと最初はそんな一曲だった。
曲名も知らなかった。
意識して覚えようともしていなかった。
それなのに、耳だけがどこかで、
「風が私を呼んでいる」という言葉と
メロディーを覚えていた。

人生の最期まで残りやすい感覚として
よく語られる、聴覚。
その聴覚のどこかに「千鳥」が残り、
ずっと私の頭の片隅にいたのだと思う。

そして毎朝のウォーキングで
風を感じるうちに、
耳の奥に眠っていたそのメロディーと、
肌で感じる風が結びついた。

だからある日、
ただの曲だったものが、
目の前の風景として広がったのかもしれない。

そう思うと、音というものは不思議だ。
耳から入ったものが記憶になり、
感情になり、
ある日突然、風景にまで姿を変える。

人間の五感は、本当に神秘的だと思う。
特に今日、
私はあらためて聴覚の奥深さに
気づいた気がする。

音の美しさ。
音が記憶に残る不思議。
そして、音が人の感性に与える力。
これからは、目で見る風景だけではなく、
耳で聴く風景も大切にしたい。

もうすぐ秋が、
そこここに姿を見せ始めるだろう。
葉の色だけではなく、風の音。
虫の声。
木々が揺れる音。
街の中を流れていく季節の気配。

目だけではなく、耳でも、
そして五感全部を少しずつ研ぎ澄ませながら、
秋を感じていきたい。

そうやって出会った風景を、
一つずつ心に残していこう。
そして私の心の芽に、
たっぷり養分を与えてあげたい。
いや、養分だけでは足りないかもしれない。
時々は、美容液も一滴。

そんなふうに、
心の芽をつやつやに育てていけたらいい。

ふと時刻を見ると、
もう15時30分になろうとしていた。
そろそろ、
あなたのいるお部屋の扉を
ノックする準備をしなければ。
……とはいっても、
あなたはまだホテルに入っていないのだから、
少し気が早いかもしれないけれど。

さあ、耳で聴いた風景を胸にしまって。
今度は、今日の次の風景へ向かおう。