心は
時間ではつながらない。

初めて逢ったばかりでも
言葉をひとつ渡し
言葉をひとつ受け取り、

あなたを知りたい、と
心がほんの少し前へ出る。

私を知ってほしい、と
もうひとつの心も
そっと手を差し出す。

そのときだった。

まだ緩んでいた
二人の間の見えない糸が

ぴん。

と張った。

あなたの表情が変わった。

顔が変わったのではない。

その奥にいたあなたが
ふっと
こちらを向いたように魅えた。

もっと知りたい。

何を思っているの。
何を感じているの。
今、何をしたいの。

私はあなたの心の奥へ
少しだけ潜ってみたくなる。

だから近づく。

言葉で。
眼差しで。
笑顔で。
温もりで。

するとあなたから返ってくる言葉も
少しずつほどけていく。

心の距離と
二人の距離が
同じ歩幅で近づいていく。

きっと——心がつながるとは
こういうことなのだ。

何度逢ったかではない。

どれほど長く
一緒にいたかでもない。

あなたの心へ
寄り添おうとすること。

そして
差し出されたあなたの心へ
私も心を差し出すこと。

初めて逢ったあなたとは
そこから一本の糸が生まれる。

また逢えたあなたとは
その糸がもう少し強くなる。

何度も逢いたいあなたとは
結び目さえ見えなくなるほど
二つの心が近づいていく。

やがて——

あなたの心模様と
私の心模様が重なって、

一滴。

また一滴。

同じ水面へ落ちていく。

そこに生まれた二つの波紋は
互いを押しのけることなく
触れ合い
重なり合い、

いつしか
どちらから始まったのかわからない
大きなひとつの輪になる。

ああ。

「心に響く」って
こういうことだったんだ。

誰かからもらった一滴が
私の心の深いところへ落ちて
小さな震えを起こす。

その震えが
また誰かの心へ届いていく。

心は
見えない。

けれど
表情に現れる。

言葉に宿る。

触れた手の温もりに宿る。

そしてときどき
一粒の雫になって
目の前に現れる。

今朝、私は
数えきれないほどの雫を見た。

遠い日の私。
少し前の私。
昨日の私。

そして
いくつもの出逢いの中で
心を交わしたあなた。

そのすべてが
今の私の心へ染み込み、

私を育てる水になっていた。

だから今日も
私は心を差し出してみよう。

これから逢うあなたへ。

あなたを知りたい。
あなたに寄り添いたい。

そして私の心も
飾らず
あなたに見てもらいたい。

そんな二つの心がどこかで

ぴん。

とつながったなら——

今日という一日は
またひとつ
新しい色を持つのだろう。

雨の朝。
空は曇っているのに
私の心は
こんなにも晴れている。

今日のこの心模様を
漢字一字に託すなら——



そうだ。

その日に見つけた心模様を
一文字にして
残してみよう。

またひとつ
私の「心遊び」が生まれた。

ここから
新しい扉を開けよう。

――心遊び・番外編へ。