「ねえ、ところで。
おはぎとぼたもちって、何が違うの?」
そう聞かれたら、
私はちょっと得意げに答えたくなる。
実は私、和菓子が好き。
近くに和菓子屋さんが
たくさんあることもあって、
よく買って食べる。
なかでも好きなのは、
もちもちとしたお餅と、
なめらかなこし餡の組み合わせ。
一番好きなのは、かしわ餅かな。
桜もちも、豆大福も、いちご大福も好き。
もちろん餡は、こし餡ならなお嬉しい。
今日、和菓子屋さんでおはぎを見かけた。
そういえば、
お彼岸になると
急にあちらこちらで見かけるようになる。
まさに、季節のお菓子。
でも私は、おはぎを見るたびに考えてしまう。
おはぎって、こし餡?
それとも粒餡?
もち米は全部つぶして、お餅のようにするの?
それとも半分くらいつぶして、
お米の粒々を残すの?
丸いの?
俵型なの?
そして、もうひとつ。
おはぎと、ぼたもち。
いったい何が違うの?
昔の私は、二つは別物だと思っていた。
ぼたもちは粒餡で、
おはぎはこし餡だったかな。
いやいや、
ご飯の粒が残っているのがぼたもちで、
すっかりつぶして
お餅のようになったものが
おはぎだと思っていたのだったかな。
とにかく、よく似ているけれど、
どこかに明確な違いがあると思っていた。
でも、どうにも腑に落ちない。
それで遠い昔、
一度まじめに調べたことがある。
そこで知ったのが——牡丹と萩。
春のお彼岸の頃に咲く牡丹になぞらえて
「ぼたもち」
秋のお彼岸の頃に咲く萩になぞらえて
「おはぎ」
なるほど。
餡が粒か、こしか。
お米をどこまでつぶすのか。
そこではなかったのね。
同じようなお菓子に、
季節によって違う花の名前を重ねる。
なんだか、とても日本らしい。
それを知ってからというもの、
意外と知らない人が多いのをいいことに、
「春は牡丹で、ぼたもち。
秋は萩で、おはぎなのよ」なんて、
ちょっと自慢げに話していたのを覚えている。
そして今日。
目の前には、
とら屋で買ってきた二つのおはぎ。
私が選んだのは、きな粉をまとい、
中にこし餡が入ったもの。
ひと口。
ああ、やっぱり私はこれが好き。
上品な甘さのこし餡。
粒々とした食感を残したもち米。
そこに、香ばしいきな粉。
久しぶりに食べる、どこか懐かしい味。
美味しいなあ。
そして目の前には、もうひとつ。
家族が選んだ、こし餡で包まれたおはぎ。
もちろん家族のものだから、
私は食べない。
……食べないけれど。
ちょっと食べたい。
「あげる」って言ってくれないかな。
そんなことを思いながら、
ちらり。
すると、こちらの心を察したのか、
「これ、よかったら食べて」
えっ。
1個、丸ごと?いいの?
もちろん、遠慮なくいただいた。
もち米を包んだ、なめらかなこし餡。
口にすると、
とら屋の羊羹にも通じるような、
深みのある上品な甘さが広がった。
これも美味しい。
でも——私はやっぱり、
きな粉の方が好きかな。
おはぎとぼたもちの違いを
昔まじめに調べた私だけれど、
今日わかったことが、もうひとつある。
春でも秋でも、
牡丹でも萩でも、
こし餡でもきな粉でも。
人のおはぎは、ちょっと美味しそうに見える。
そして家族というものは、
案外そんな視線をちゃんと
見抜いているらしい。
何も言っていないのに、
見つめていたら、
ひとつ丸ごと私のところへやってきた。
お彼岸の日の、
ちょっと甘くて、
ちょっと可笑しい寄り道だった。
牡丹萩
名前は違えど
甘きもの
見つめていたら
ひとつ来たりぬ
— Morimura
言葉の小径|おはぎとぼたもち、さてどっち?
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