お昼に、ゆで卵を2個とおはぎを2個。

お腹がいっぱいになったところで、
少し眠ろうと思っていた。

けれど、洗濯物を取り込んで、
たたんで、
ハンカチにアイロンをかけて。

横浜ステイの荷物も、
できるところから少しずつ詰めていった。
そんなことをしていたら、
いつの間にか14時を回っていた。

寝ればいいのに。
そう思いながら、
また私は若様の扉を開いてしまった。

今、発刊されているところまで
2回目を読み終え、今度は3回目。
我ながら、どれだけ好きなのだろう。
けれど、そんな若様の魅力も、
今日の睡魔には勝てなかったらしい。

気づけば私は、
ソファの上で眠りに落ちていた。

どれくらい眠ったのだろう。

ふいに目が覚めた。
何か夢を見ていた。
少し変な夢だったような気がする。

けれど、何の夢だったのか、
もう何ひとつ覚えていない。

それよりも――寒い。
寒いなんてものではない。
ブルブルブルブル。
震えるほど寒かった。
エアコンを切っても、
なかなか震えが止まらない。

もしかして、怖い夢でも見ていたのかな。

あまりにも寒くて、私はベランダへ出た。

外のほうが暖かいと思ったから。

ところが、
昼間あれほど照りつけていた太陽は、
もうすっかりやさしくなっていた。
風は涼しく、日差しは柔らかい。

そして空を見上げた瞬間――

わあ。

目の前いっぱいに、
透き通るような空色が広がっていた。
雲はほとんど消えている。
残った雲だけが、
しぼんだ白い風船のように、
ぽつり、ぽつり。

その小さな雲を眺めているうちに、
私はまた遊び始めた。
あれ?龍?
ひとつ見つけると、もう止まらない。

大きな龍が2匹。
小さな龍が4匹。
1匹の龍は、
小さな雲をつかんでいるようにも魅える。

私もこのまま空へ昇って、
龍たちと遊んでみたい。
そう思って魅つめていると――

あら?若様もいる。
龍がいて、
聖獣の猫が2匹いて、
小さな小鬼ちゃんも2人いる。
なのに、花嫁さんだけが見当たらない。

あ。

もしかして、
若様が追いかけているのが花嫁さん?

先ほどまで私が夢中になっていた物語が、
そのまま空へ飛び出してしまったみたい。

若様の群青の炎が少しやわらいで、
美しい空色になり、
その中を物語の登場人物たちが進んでゆく。
ちょっとハマりすぎかしら。

そう思って、もう一度空を見上げた。
すると、さっきまでの龍はもういない。

雲は姿を変え、
今度は伊勢佐木モールで見た、
あの大きな白い犬のようになっていた。

でも、じっと見ていると――
犬ではないような。

後ろを振り向いている龍にも魅える。

本当に雲って不思議。

空って不思議。

ねえ、風さん。

心は小さな画家のように、
そのときの心模様を空
いっぱいに描いてしまうのかもしれないね。

いつの間にか、
震えていた体も暖かくなっていた。
そろそろ部屋へ戻ろう。

もう一眠りしたい。
まだ、だいぶ眠たい。
でもその前に――きっと私は、
また若様の扉を開いてしまうのだろう。

あ、だめだめ。
17時になったらお風呂に入って、
それから晩ご飯。

今日はほとんど買ってきたものだから、
支度もそれほど大変ではない。

また家族と、楽しく食卓を囲もう。

それにしても。

私は、いったい何の夢を見ていたのだろう。

あんなに寒かったのに、
何ひとつ思い出せない。

でも――
思い出そうとしなくてもいいのかもしれない。
だって、夢なんだから。
忘れてしまった夢のつづきは、
もう目の前の空が、
こんなにも美しく描いてくれたのだから。

夢醒めて
見上げた空に
龍遊ぶ
忘れた夢の
つづきは青く

— Morimura