朝マックで、
家族と今日一日の予定について話していた。

私には、ずっと探していた靴があった。
横浜のお店にはなく、
取り寄せをお願いしたものの、
直営の他店舗にも会社の在庫にもないという。
けれど後から電話をいただき、
「デパートなら、
もしかすると残っているかもしれません」
と教えてもらった。

上大岡のデパートを教えてもらったけれど、
台風接近で行く機会を逃してしまった。

それなら今日、
近くのデパートを探してみよう。

家族に、
「一緒に行く?」
と聞くと、
「行く」
と嬉しそうな返事が返ってきた。

朝マックから帰り、
荷物を片づけて、10時過ぎに出発した。

そして——あった、あった、あった。
お目当ての靴が、ちゃんとそこにあった。
たったそれだけのことなのに、
なんだか嬉しい。
ずっと探していたものに
思いがけず逢えたときって、
ちょっとした宝探しに
成功したような気分になる。

靴を買ったあとは、
地下1階の和菓子売り場へ。
お彼岸のお供えや、
家でいただく和菓子を選んだ。

休日だから売り場はすごい人。
ちょうど月見の季節で、
月とうさぎをモチーフにした
可愛らしい和菓子が、
あちらにもこちらにも並んでいる。

見るからに美味しそう。
でも、あまりに可愛らしくて、
食べるのがちょっとかわいそう。

一方、洋菓子売り場へ目を向ければ、
こちらはハロウィン。

月見とうさぎ。
かぼちゃとおばけ。

日本に古くから伝わる習わしと、
外国からやってきたお祭りが、
同じデパ地下で仲良く賑わっている。
なんだか不思議。

私はやっぱり、月見の方に心が惹かれる。

ハロウィンは毎年、
ほとんど見向きもしないのだけれど。

そして地下2階へ。
ここからは、家族の食べたいもの探し。

「どれがいい?」
「これ食べたい?」
「あれがいい?」
ところが、返事が返ってくるまでが長い。

うーん……。
3分とは言わないけれど、
まあ、なかなか決まらない。
私なら、これ、あれ、次、
と進んでしまうところを、
ゆっくり、ゆっくり。
のんびり、のんびり。

そんな小さな時間の積み重ねで、
気づけば2時間近くも
あちらこちらを歩いていた。

眠い。
疲れた。
だんだん足まで上がらなくなってきた。

やっぱり、
人と歩くときは距離よりも
ペースの違いの方が疲れるのかもしれない。

でも今日は、家族孝行の日。
ここはぐっと我慢。
今日は私の速さではなく、
家族の速さで歩こう。

12時過ぎ、自宅へ戻った。

家に入る前、ふと空を見上げた。
限りなく透明に近い空色。
そこに、面白い形をした雲が
いくつか浮かんでいた。

一つは、
前を向いてまっしぐらに走っている人。
そしてもう一つは、
その人の服を後ろからつかんで、
「待って、待って」と追いかけている人。
思わず笑ってしまった。

まるで、今日の私たちみたい。

そして、その後ろには小さな雲が二つ。

ぴょん。
ぴょん。

二匹のうさぎが跳ねながら、
私たちの後を追いかけているように魅えた。

さっきまでデパートの
和菓子売り場で見ていた月とうさぎが、
今度は空へ遊びに来たのかしら。

雲って面白い。
同じ雲でも、そのときの心によって、
まったく違うものに魅えてくる。

さて。
そろそろ、お昼にしようかな。
今日はお彼岸。

和菓子屋さんで、おはぎを買ってきた。
しかも、とらやのおはぎ。
とらやの羊羹は大好きだけれど、
おはぎをいただくのは初めて。

三種類の中から、
私はきなこをまとった中に
こし餡の入ったもの。
家族は、こし餡でくるんだものを選んだ。

さて、どんな味がするのだろう。

楽しみにしながら、おはぎを眺めていた。

すると——あれ。
おはぎを見ていたら、
なんだかひとつ、思い出したことがある。

でも、その話は少し寄り道になりそうだから。

今日の物語は、いったんここでひと休み。

空では二匹のうさぎが跳ね、
目の前には、二つのおはぎ。

さて。

まずは、いただきます。

急ぐ雲
追う雲のあと
うさぎ跳ね
今日は歩幅を
そっと合わせる

— Morimura