― 本日、13時開店 ―
朝から、
ゆっくり。
のんびり。
心のままに歩きすぎた。
さらにカヌレを求めて寄り道までして、
ふと時計を見れば——
え。もう10時半?
さっきまでの森村は、
風だ、空だ、雲だ、甘味だ、と
ずいぶん悠長に心を遊ばせていた。
ところが今日は金曜日。
「せめて午前中までに来ている
メールだけでも見ておこう」
そう思ってパソコンを立ち上げた瞬間から、
空気が変わった。
画面をちらり。
時計をちらり。
また画面。
また時計。
ちらり。
ちらり。
ちらり、ちらり。
ついさっきまで
ゆるり、ゆるりだった心が、
いつの間にか
せかせか、せかせか。
そこで手帳を開いて、さらに思い出す。
あ。
今日中にやっておかなければいけないこと、
ある。
しかも今日は金曜日。
明日は土日。
来週に回すより、
今日のうちに送っておいた方が
いいものばかりだった。
時計を見る。
11時。
うーん。
これはもう、
どう考えても12時出勤には間に合わない。
だって森村、
まだメイクすらしていない。
悩んだ。
考えた。
もう一度時計を見た。
そして——諦めた。
ただし、これは後ろ向きな諦めではない。
本日の森村、
ここは潔く予定変更。
お店へ連絡した。
「すみません。
テレワークが終わらないので、
今日は13時からにしてください」
すると不思議なもので、
たった1時間増えただけなのに、
心に余白ができた。
そこからは、サクサク。
サクサク。
サクサク、サクサク。
集中すること1時間と少し。
手帳に書いてあった今日の「やること」は、
きれいに全部消えた。
よし。
完了。
そしてメイクも済ませた。
考えてみれば、
私はかなり早くから起きている。
それでも時間が足りない。
なぜなら、やりたいことが多すぎるから。
12時出勤なら、11時半には外へ出たい。
となれば11時には
支度を終えていなければならない。
「だったら最初から出勤を1時間遅くすれば……」
いやいや。
森村。
そこへ逃げてはいけない。
与えられた時間の中で、
もう少し上手に時間を使えるようになろう。
そう心に小さく言い聞かせる。
さて。
そんなこんなで、ようやく出発。
今日のお店の予定は——真っ白。
今朝見上げた雲と同じくらい、
気持ちがいいほど真っ白。
本来なら少々悲しむ場面
なのかもしれないけれど。
まあ、いい。
時間ができたら睡眠貯金をするか。
アイマスクをつけて、
ただの暗闇へ行くか。
それとも——鬼の若様の扉を開いて、
あの漆黒の世界へ行くか。
同じ「黒」なら……
どうやら今日の森村の心は、
少しだけ漆黒の方へ傾いているらしい。
ふふ。
それもまた、今日の成り行き。
何が起こるかは、まだ分からない。
だから今日も、なるようになる。
心のままに。
それでは——森村、午後の暖簾を出します。
本日は、13時開店。
さて。
今日の暖簾の向こうには、
どんな物語が待っているのでしょう。
森村、午後の暖簾を出します。
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