森村、これにて店仕舞いします。
今日は、真っ白なスケジュールから始まった。
あら。
今日はずいぶん静かな一日になるのかしら。
そんなことを思いながら開けた、
森村の暖簾。
ところがどっこい。
ネットを見て声をかけてくださったあなた。
そして、お久しぶりに
逢いに来てくださったあなた。
さらに、またまたお久しぶりに
逢いに来てくださったあなた。
真っ白だったはずの一日は、
ひとつ、またひとつと色をもらいながら、
気がつけば、
ずいぶん賑やかな絵になっていた。
人と逢うたびに、
その人だけの色がある。
初めましての色。
久しぶりの色。
懐かしさの色。
安心の色。
笑い声の色。
そして、抱きしめたときの温もりの色。
今日もそんな色をひとつずつ受け取りながら、
森村の一日は、
真っ白なところから少しずつ彩られていった。
そして最後に待っていたのが、
十五夜の月明かり。
昼間にもらった色も、
夜にもらった色も、
その光を浴びたら、
なんだか全部きらりと磨かれて、
もう一度、私の心へ戻ってきたようだった。
……と。
ここまでは、なかなか綺麗なお話。
問題はそのあとである。
最後のドアのあなた。
話が盛り上がる。
延長。
また盛り上がる。
延長。
まだ盛り上がる。
延長。
……ちょっと待って。
何回延びるの。
気づけば、お仕事終了、午前3時半。
真っ白だったスケジュールはどこへ行った。
静かな一日になるはずだった森村は
どこへ行った。
本日の森村、
予定表だけを見れば「余白たっぷり」
現実は、余白、完全消滅。
しかも外へ出れば、
夜の帳の漆黒がどこか若様の世界みたいで。
そのうえ空には、あの月。
若様の瞳は赤い。
だから月を見て、
「若様の瞳みたい」
とはさすがに言わない。
でも。
あの静かな光。
ただ一人の花嫁を思い続けるような、
まっすぐで、少し切なくて、
でも温かい光。
……あら。
これって、若様が花嫁を思っている光では?
十五夜まで若様に変換される森村の脳内。
重症です。
いや。
幸せなので、
たぶん治療の必要はありません。
むしろこのまま、
青い炎と月明かりの両方に
包まれておきましょう。
というわけで。
真っ白から始まった一日は、
たくさんのあなたに色をもらい、
最後は月まで若様色に染まり、
午前3時半まで見事に走りきりました。
本日の営業、
これにて終了。
暖簾をしまいます。
灯りを落とします。
若様の扉は…………それは別営業です。
えへへ。
森村、これにて店仕舞いします。
本日も、
たくさんの温もりをありがとうございました。
では。今度こそ本当に、
おやすみなさい。
— Morimura