昨日、目の前に置かれた一本。

上喜元。
純米大吟醸。
山田錦30%

最初に目を引いたのは、その佇まいだった。
日本酒というより、
白ワインを思わせるようなボトル。
そして注がれたのも、
いつものぐい呑みではなく、
白いワイングラス。

その姿を見ただけで、
いつもの日本酒とは
少し違う時間が始まるような気がした。

グラスを手に取り、口へ運ぶ。

すっと入る。

雑味がない。

甘い。

でも、その甘さが前へ出すぎない。

やわらかく、

上品に、

舌の上でほどけていく。

「甘い日本酒」という言葉だけでは、
少し違う。
華やかだけれど、騒がしくない。
きれいだけれど、よそよそしくない。
白いワイングラスの中に、
静かに咲いた花のような味だった。

山田錦30%。
米をそこまで磨くということは、
余分なものを削りながら、
その奥にあるものだけを
残していくということなのだろう。

そう思うと、
雑味がないというのは、
ただ「すっきりしている」
ということではない。
余計なものを削ぎ落としたあとに残る、
芯のようなもの。

その芯に、
ほのかな甘みが宿っていた。
それが私には、とても心地よかった。

お客様が持ってきてくださった一本。

ただ珍しいお酒をいただいた、
というだけではない。
その人が選んで、
持ってきてくださって、
一緒の時間の中で開けた。

だから味の記憶には、
その場の空気まで一緒に残る。

白いグラス。

澄んだ酒。

やわらかな甘み。

そして、その時間。

日本酒は不思議だ。
同じ一本でも、誰と飲んだか。
どこで飲んだか。
どんな気持ちで口にしたか。
それだけで、
記憶の味まで変わっていく。

昨日の上喜元は、華やかというより、
白く、静かで、上品。
そんな一献だった。

白き酒
磨きの果てに
甘み宿り
ひととき静かに
心ほどける

— Morimura