雨の朝を歩き、
時代の風に心をさらわれ、
水面に自分の姿を映し、
白い世界の中に、まだ魅ぬ未来を思った。
そして今、
私はようやく地上へ戻ってきたような
気がしていた。
過去の時代へ。
海の彼方へ。
水面の奥へ。
心はずいぶん遠くまで旅をした。
けれど、帰ってきた場所は、
やっぱり今ここだった。
今日が始まる場所。
私がこれから歩いていく場所。
心の中には、真っ白な国が広がっている。
まだ何色にも染まっていない。
けれど、何もないわけではない。
雨の音も、
風の匂いも、
木々の緑も、
遠い時代に生きた人の心も、
水面に揺れた光も、
もうすでに、そこに静かに息づいている。
その国の主人公は、私。
誰かに決めてもらうのではなく、
自分で歩き、
自分で感じ、
自分で選びながら、
少しずつ景色を増やしていく。
今日で、毎朝魅てきたこの風景とは、
しばらく離れる。
だからこそ、急ぎたくはなかった。
ひとつひとつを、
心の奥へゆっくり染み込ませるように
魅ていたかった。
そして私は、また一歩前へ出る。
水平線の向こうに何があるのか、
まだわからない。
でも今は、それでいい。
まだ魅ぬ景色を迎え入れる余白を残したまま、
私の国の新しい一日が、
静かに始まっていく。
水平線の向こうには|第五章 私の国へ、今日が始まる
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