大さん橋を出た。

さあ、ここからはモリリンの時間。

本当なら、
そのまままっすぐ帰るはずだった。

……が。
赤信号。
「止まるの、いやだな」というわけで、右へ。

ひとつ先の横断歩道が青になったので、
すいっと渡る。

そこで、ふと思い出した。
「あっ、日本大通り!」
昨日の宿題だった。

確か、大さん橋からまっすぐの道だったはず。「しまった。行き過ぎた?」
戻ろうかと思った。

でも今日は、最後の朝だからと、
ゆっくり、たっぷり歩いていたせいで、
いつもより時間がかかっている。

「まあ、次の横浜ステイに持ち越しかな」

そう思って前へ進もうとした、

そのとき。

……ん?

「あった!」

間違えたと思っていた道が、
実は日本大通りだった。

旧外国人居留地と日本人街を分けていた通り。
説明板の前で、
「ふむふむふむ」モリリン、
また時代の風にさらわれそうになる。

危ない。

今朝はもう、幕末へも明治へも、十分飛んだ。

「風さん、ちょっと押し戻して」

「了解」

はい、現代へ帰還。

そのまま帰り道を歩き始める。

雨はだんだん強くなってきた。
本当は十番館にも、丸和にも寄って、
いつか実行したい横浜巡りの
再度の下見をしておきたかった。
でも今日は中止。

「これも次回の宿題!」

そう決めたら、気持ちはすっきりした。

しばらく歩くと、大きな水たまり。

ぽつん。
ぽつん。
ぽつん。

雨粒が落ちるたび、波紋が広がっていく。

今までなら、
「きれい」で終わっていたかもしれない。
でも今朝のモリリンには、
それが少し違って魅えた。

今を生きる人たちの波紋。
昔この街を歩いた人たちの波紋。
いくつもの時代が重なりながら、
今へ続いているような波紋。

「あ、また心が飛びそう」
「戻っておいで」
「はーい」

今日はこればっかり。

しかも今日は、最後の朝だからと、
朝の日記をシリーズ化してしまった。

第一章。
第二章。
第三章。
第四章。
第五章。
そして終章。

「……多いな」
自分でもちょっと思う。
だから、いつもより短めに整えた。

それでも、雨宿りできる場所を見つけては
立ち止まり、
そのとき感じたことを言葉にしていく。

これが、なかなか楽しい。
感じた瞬間をもう一度文章にすると、
風景がまた心の中で動き始める。

そしてまた、
「飛びそう」
「押し返す」
「お願い」
そんなことを風さんとやりながら、
伊勢佐木モールが見えてきた。
そこで次なる課題。

朝ごはん、どうする?

月見マフィン。
……でも、昨日寝る前に
ゆで卵をひとつ食べたせいか、胃が少し重い。 

サンドイッチ。
……冷たい。

パン。
……今日は違う。

「そうだ、おにぎり!」

今日はお客様と食事の予定もある。

なら、いつもの昼と夜用ではなく、
朝と昼に回せばいい。

「決定!」

今日のモリリン、珍しく判断が早い。

雨は最後まで降り続いていた。

それでも、ようやくゴールに戻ったとき、
心は不思議なくらい爽やかだった。

今日の森村探検隊、収穫はたくさん。

日本大通りの宿題、ひとつ完了。
次回の宿題、ふたつ追加。
波紋から時代を拾い、
朝ごはんはおにぎりに決定。

そして何より、寄り道したからこそ、
出逢えたものがあった。

モリリン、本日も寄り道大成功。