「はいっ、本日の森村さん、
そろそろ営業終了でーす!」

元気よく声を上げたのは、もちろんモリリン。

その横でヒカリンが、
ぴょこん。
「きょう、いっぱいだったねえ」
うん。
いっぱい、いっぱい。

今日は、
はたちの風に誘われて、
遠い記憶へと心の旅をして。
そして、
はたちの笑顔に背中を押されるがままに、
横浜プチ旅へ。

「おなかも、いっぱい!」
ヒカリンが両手を広げる。
「胸もいっぱい!」
モリリンも負けずに続ける。
「それからね、時間もいっぱい!」

そう。
今日一日は、
本当にいろんなもので満たされていた。

懐かしさも。
楽しさも。
おいしさも。
笑顔も。

そして、
少し胸の奥がきゅっとなるような、
遠い日の記憶も。
「今日は、ずいぶん遠くまで旅したね」
モリリンが言う。
「でも、ちゃんと帰ってきたよ」
ヒカリンが、にっこり。

そのとき。ふわり。
どこからともなく、
少しひんやりとした風が通り抜けた。

「あ」
ヒカリンの耳が、ぴくんと動く。
「風さんだ」
モリリンも空を見上げる。
すると風さんが、
いつものように何も急かさず、
ただ静かにそこへいる。

今日、
はたちの風に誘われて始まった心の旅。
最後には、
いつもの風さんが
そっと迎えに来てくれたみたい。

「ねえ、風さん」モリリンが言う。
「今日の森村さん、どうだった?」
風さんは答えない。
ただ、ふわっ。
もう一度、やさしく吹いた。

「それ、たぶん合格ってことだよ」
ヒカリンが勝手に決める。
「絶対そう!」モリリンも勝手に決める。

ふふ。

まあ、いいか。
今日はよく歩いた。
よく食べた。
よく笑った。
よく心を動かした。

だったらもう、
本日の森村さんは、
十分すぎるほど営業しました。

「というわけで!」
モリリンが張り切って前へ。

「本日の森村営業――」
ヒカリンも一緒に、
「しゅうりょーう!」
そして風さんが、ふわり。

最後の幕を閉じるみたいに、
静かに通り過ぎていく。

いっぱい、いっぱいだった今日一日。
あとはこの満ちた気持ちを、
こぼさないように胸の中へ。
また明日。
新しい風が吹いたら、
新しい物語の始まりです。

本日もありがとうございました。

森村営業、これにて終了です。

— Morimura