目が覚めたのは、13時5分。

真っ暗な部屋の中で目を開けた瞬間、
なぜか朝、起きたような気がした。

カーテンの向こうから、
ほんの少しだけ明るい外の気配。
「あ、寝坊した」そう思って、
ぱっと飛び起きる。
けれど時計を見れば13時5分。

「あれ?」
13時20分に起きるつもりだったのだから、
むしろ25分も早い。
どうやら、
まだ頭だけが睡眠の世界を漂っていたらしい。

朝から動き回って、
ようやく潜り込んだ眠りの中。
気がつけば、ちょうど2時間ほど。
これなら、ちょうどいい。
そろそろ起きて、
お店へ行く支度を始めよう。

――そして、ここからは。

「ヒカリン、森村さん起きたよ」
「ほんと?
さっきまで、
あんなに気持ちよさそうに寝てたのに」
「起きた瞬間、
“寝坊した!”って飛び起きてた」

「ふふっ。
でも予定より25分早いんでしょ?」
「そうなの。
寝坊じゃなくて、むしろ優秀」
「じゃあ今日は余裕の森村さん?」
「……それは、どうかなぁ」
「え?」「森村さんのことだから、
ここから急にバタバタするかもしれないよ」
「それ、いつものことだね」

ふたりで顔を見合わせる。
そして今日の予定表を、
そっと覗き込む。

「モリリン」
「なあに?」
「今日、真っ白だよ」
「ほんとだ」

予定の入っていない、
まっさらな一日。
まだ誰の色もついていない。

「この白、何色になるのかな」
「ピンクかな」
「群青かもしれないよ」
「金色かも」
「それとも……」
「最後まで真っ白?」

ふたりは少しだけ黙って、
その白い余白を魅つめる。
それもまた、
今日という一日の形なのかもしれない。

誰かと過ごす時間が生まれれば、
そこに新しい色が落ちる。
何も起こらなければ、
白は白のまま、
静かな余白として残る。
どちらでもいい。

森村さんは今日も、
扉の向こうで静かに待つ。
あなたからのお誘いを。

その間は――睡眠の世界を漂ってもいい。
群青の世界を彷徨ってもいい。
日記の世界に浸ってもいい。

「モリリン、今日はどこに行く?」
「うーん……その時の気分で決める」
「自由だねぇ」
「だって今日は、まだ真っ白だから」

何色にもなれる。
どこへでも行ける。

そんな白い一日の真ん中で、
森村さんは今日ものれんに手をかける。

それでは――森村、のれんを出します。

今日の白に、
最初のひと色を落としてくださるあなたを、
静かにお待ちしています。

白き日に
まだ名も持たぬ
色を待つ
扉の向こう
風だけが知る

— Morimura