のれんを出して、少し経った午後。
ふとコーヒーが飲みたくなって、
近くのコンビニまで少しだけ外へ出た。
朝の風はあんなに冷たかったのに、
午後の空気はずいぶんやわらかい。
暖かい。
どこか丸みを帯びたような、
ふわりとした風だった。
そして、何気なく空を魅上げる。
今朝、
私は自分の空を
いったん「白」にしたはずだった。
何色にも染まっていない、
まっさらな白。
でも、
午後のその空には、
薄いグレーのような、
淡い紺色のような、
名前をつけるには少し曖昧な雲が
静かに浮かんでいた。
その色を魅ていると、
ふと、
眠っていた2時間のことを思った。
朝のウォーキングを終えて、
そのまま眠らずに過ごして、
11時頃から少しだけ眠った。
ほんの2時間。
けれど、
あの眠りは
思っていた以上に深かったのかもしれない。
夢でも見ていたのだろうか。
そう思ってみる。
何かを見たような気もする。
誰かと話していたような気もする。
どこかを歩いていたような気もする。
でも、
もう思い出せない。
ただ、
目が覚めたときに残っていた
ぼんやりとした感覚だけがある。
それは、
言葉ではなくて、
色だったのかもしれない。
今朝、
歩きながら
ふと何かを思ったことも覚えている。
その瞬間だけは、
確かに何かが心に浮かんだ。
でも、
何だったのか。
今はもう、
きれいに抜け落ちてしまった。
不思議だなと思う。
思ったことは消えているのに、
そのときの心の温度だけが残っている。
言葉は忘れてしまったのに、
色だけがどこかに漂っている。
薄いグレー。
淡い紺。
白の中に、
ほんの少しだけ溶けたような色。
あの朝の私は、
少し考えていたのかな。
少し迷っていたのかな。
それとも、
ただ何となく、
遠くを魅ていただけなのかな。
どれも、今となってはわからない。
でも、それでいいような気もする。
すべての気持ちに名前をつけなくてもいい。
すべての出来事を覚えていなくてもいい。
忘れてしまったものにも、
きっとその瞬間だけの色がある。
そして、
その色はときどき、
こうして空のどこかに浮かんで、
こちらを魅ているのかもしれない。
コンビニまでの、ほんの短い道。
コーヒーを買うだけの、
なんでもない午後。
なのに、
私はそこで立ち止まって、空を魅ていた。
白くしたはずの私の空に、
淡いグレーと、ほんの少しの紺。
もしかすると、
今朝の私の心模様は、
こんな色だったのかもしれない。
そう思ったら、
なんだか少しだけ
愛おしくなった。
忘れてしまった自分の心まで。
コーヒーを片手に、
私はまた、
のれんの向こうへ戻る。
今日の白には、まだ名前がない。
でも、ほんの少しだけ、
色が生まれ始めている。
白き空
忘れし想い
雲となり
淡き紺色
午後に浮かべり
— Morimura
余白|白い午後、淡き雲浮かぶ✨
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