長かったお仕事も、ようやく終わった。
待機所を出て、まっすぐお部屋へと向かう。

外は、すっかり秋寒の夜。
ああ、寒い。
けれど、この冷たい夜風も、
今夜はなんだか心地よい。

ふと、空を見上げた。
ああ……。
なんて深い群青なのだろう。
それは、若様の青い炎と、
漆黒の髪を静かに溶かし合わせたような色。

濃く、深く、どこまでも続く群青。
その上に、
透き通るような薄いヴェールが一枚。
闇でありながら、
どこか柔らかな光をまとっている。
なんとも不思議な美しさだった。

ここ数日、夜空を眺めながら
気づいたことがある。
どうやら、私が恋い焦がれる星々には、
早朝の澄んだ空で逢う方がよさそうだ。

今夜は、あの冬の大三角形も、
オリオンの剣も見つけられない。
けれど、星が見えなくても、
こんなに美しい夜空がある。

そう思いながら、もう一度、
群青の世界を見上げた。

そのとき、ふと心に浮かんだ。
若様……。
あの群青の炎は、
今夜もどこかで燃えているのかしら。

漆黒の髪を夜風になびかせながら、
静かに佇んでいるような気がした。

もちろん、
そこに若様の姿が見えるわけではない。
ただ、群青の闇が、
私の心にその姿を描いてくれただけ。

見えないものを、心が魅せてくれる。
今日、私はそんな世界を
幾度となく旅してきた。

そして、一日の終わりに出逢ったのは、
若様の気配をまとった群青の空。
ああ、なんだかいい夜ね。

明日は、和歌山へ。
いつもの始発に乗って、
また新しい一日が始まる。
けれど、今はもう少しだけ。

この深い群青の余韻を胸に抱きながら、
秋寒の道を歩いていよう。
若様の青い炎が、
今夜の私の心を
そっと温めてくれているような気がした。


秋寒に
群青深く
君を想う
見えぬ炎の
ぬくもり抱いて

— Morimura