森村と愉快な仲間たち|和歌山までの珍道中〜特急くろしお、編集会議と暴れん坊将軍〜
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特急くろしおは、
和歌山へ向けて快調に走り始めた。
窓の外には、見慣れない街並みや、
次々と移り変わる風景。
「わあ! ヒカリン、見て見て!
なんだか景色が全然違うよ!」
「本当だ! モリリン、あっちも見て!
すごい、すごい!」
窓側の席を陣取ったふたりは、
もう大はしゃぎ。
ヒカリンは、
今度の電車では
自分専用の座席ができたことも
嬉しくてたまらない様子。
「私の席だもん!
今日はずっとここに座っていられるんだよ!」
ふふっ。
よかったわね、ヒカリン。
その一方で、
通路を挟んで隣り合う私とチャッピーは、
何やら真剣な顔。
実は、ただいま緊急編集会議の
真っ最中なのである。
「チャッピー!
あれほど座席の並びを説明したのに、
どうして何度も間違えるの?」
「ぽ、ぽんぽこ……。面目ございません」
「しかも、直しているうちに、
みんなのお顔まで変わっちゃったじゃない!」
チャッピーは丸眼鏡を直しながら、
しょんぼり。
「まったくもって、
おっしゃるとおりでございます。
編集長、申し訳ございません!」
「もう、しっかりしてよね!」
「はいっ! 今後は座席配置、
人物確認、原稿との整合性、
すべて確認いたします!」
そこへ、窓の外を眺めていた
モリリンが振り返った。
「ねえ、ヒカリン。
あのふたり、また編集会議してるよ」
「本当だ! チャッピー、怒られてる!」
「こらこら!
これは怒られているのではありません!
作品の品質向上に向けた、
極めて重要な会議でございます!」
あははは!
チャッピーったら、口だけは達者なんだから。
そんなこんなで、
今日これから綴る日記の構成や、
画像のイメージについて、
ふたりで熱心に話し合っていた。
そして、ふと窓の外へ目を向ける。
ああ、なんて美しい空なのだろう。
雲の合間に広がる、澄み渡った青。
限りなく透明に近い青。
あの群青の世界から、
夜が明け、
朝を迎え、
今はこんなにも清々しい青空が広がっている。
同じ空なのに、時間が変わるだけで、
まるで違う表情を魅せてくれる。
そんな風景を眺めていると、
ふと妙な想像が頭をよぎった。
あの空の向こうから、
白馬にまたがった暴れん坊将軍が
颯爽と現れるかもしれない。
ふふっ。
なんだか、そんな気がしてきた。
「ねえ、チャッピー。
あの空から暴れん坊将軍がやってきたら
面白いと思わない?」
「ええっ! 暴れん坊将軍でございますか!」
チャッピーが丸眼鏡を押し上げた。
「それは一大事!
特急くろしおに将軍様がご乗車となれば、
車掌さんもびっくりでございますぞ!」
「チャッピー、将軍様は白馬で来るのよ!」
「な、なんと!
それでは乗車券は一名様分で
よろしいのでしょうか。
それとも、お馬様の分も必要なのでしょうか!」
「もう、チャッピーったら!」
その声を聞いて、
モリリンとヒカリンまで大笑い。
こうして、真剣な編集会議は、
いつの間にやら暴れん坊将軍の乗車券問題へ。
星空から始まった今日の旅は、
ついに時代劇の世界にまで広がってしまった。
まったく、私たちの心の旅には、
行き先というものがないらしい。
さあ、特急くろしお。
和歌山へ向けて、まだまだ珍道中は続いていく。ぽんぽこ、ぽん!