和歌山駅まで
お迎えに来てくださった
上様にご案内いただき、

馬車道藩・森村姫御一行は、
そのまま本日の打ち合わせ会場へと向かった。

上様は、紀州・和歌山組を束ねるお方。
そして、その脇を固めるのは、
御側御用人と大岡越前守。
なかなか頼もしい顔ぶれである。

一方、馬車道藩からは森村姫が参上。
そして今回、なんと初めて、
モリリン、ヒカリン、チャッピーの3人も、
こっそりお供についてきたのである。

「わあ! ここが上様のお城なのね!」

モリリンが目を輝かせる。

「すごい! すごい! ヒカリン、
ちょっと緊張しちゃう!」

「なにを申す! 我らは馬車道藩の
由緒正しきお供であるぞ。
堂々としておればよい!」

丸眼鏡をくいっと持ち上げ、
得意満面のチャッピー。

ところが、この珍客3人組。
和歌山組の皆さまから、
思いがけないほどの大歓迎を受けたのである。

「まあ、かわいい!」
「ようこそ、和歌山へ!」

すっかりご機嫌のモリリンとヒカリン。
チャッピーに至っては、
すでに和歌山組の一員になったような
顔をしている。
困ったものである。

もさて、本日の定例会は10時30分から。
毎月一度の大切な打ち合わせである。
森村姫は、お供の3人に言い聞かせた。

「いいこと、みんな。
私はこれから大切な打ち合わせなの。
あなたたちは会議には参加できないから、
おとなしく待っていてね」

「はーい!」
モリリンとヒカリンが元気よく返事をする。

「チャッピー、あなたがお守り役よ。
しっかりお願いね」

するとチャッピー、胸をぽんと叩いた。

「お任せあれ、姫様! このチャッピー、
命に代えてもお二人をお守りいたしまする!」
なんとも頼もしい。

……と思った、そのとき。

「ただし姫様、おやつが出た場合には、
拙者もいただいてよろしいでしょうか?」

「チャッピー!」
モリリンとヒカリンの声が重なった。

まったく、先が思いやられる。
そうして森村姫は、
上様、御側御用人、大岡越前守とともに
会議室へ。
お供の3人は、しばしお留守番となった。

さて、定例会は滞りなく進んだ。
いつもの顔ぶれであるから、話も早い。

およそ1時間で本日の議題を終え、
残る30分ほどは近況報告や次回の予定など、
和やかな歓談の時間となった。

次回は11月8日、あるいは15日。
まだ確定ではないものの、
再び紀州を訪れる日が楽しみである。

そんな話をしているうちに、
時計の針は12時を指していた。
無事、定例会終了。

「やれやれ、今日も無事に終わったわ」

森村姫がほっと胸をなで下ろす。
そこへ、待ちかねたように
モリリンたちがやって来た。

「森村姫! お疲れさまでした!」

「ねえねえ、もうお仕事終わったの?」

「終わったわよ。
みんな、お利口にしていた?」

「もちろんでござる!」
チャッピーが胸を張る。
その得意げな顔を見ると、
少々怪しい気もするが……。
まあ、よしとしよう。

すると、上様から思いがけないお誘いが。

「では、みんなでお昼でも食べに行こうか」

その瞬間。

「やったー! うなぎだー!」

真っ先に飛び上がったのはヒカリンである。

「ヒカリン! もう少しお行儀よくしなさい!」

モリリンが慌ててたしなめる。
するとチャッピーが、すかさず口を挟んだ。

「これこれ、ヒカリン。
上様の御前であるぞ。

まずは『かたじけのうございます』と
申し上げるのじゃ!」

「かたじけのうございまーす!」

「うむ、よろしい!」

なんだか、
チャッピーまで偉くなった気分らしい。

ところが、そのチャッピー。
小さな声で森村姫に尋ねた。

「ところで姫様……
うなぎは一人一匹でござるか?」

「チャッピー!!」

今度は森村姫まで声を上げてしまった。

上様は、そんな愉快な一行を眺めながら、
にこやかにおっしゃった。

「じゃあみんな、うなぎでも食べに行こう」

なんとありがたいお言葉。
本日のお食事処は、
和歌山駅近くの鰻料理店『二与呂』。
以前にも上様に連れて行っていただいた
お店である。

前回、森村姫がいただいたのは、
その名も堂々たる「将軍様」

さすがは上様のお膝元。
なんとも威厳のある名前ではないか。
しかし、今日は事情が違う。

なにしろ、馬車道藩から
お供の3人まで押しかけているのである。

「今日は少し遠慮して、
『紀州』にしておこうかしら」
森村姫、控えめな選択である。

もっとも、この「紀州」とて、
うなぎが丸ごと一匹。
十分すぎるほどのご馳走なのだ。

これなら、
モリリンもヒカリンもチャッピーも、
きっと満足できるだろう。
そう思っていると……。

「姫様! 拙者、
うなぎの香ばしい匂いを想像しただけで、
お腹が鳴りそうでござる!」

「チャッピーったら、
さっきまで偉そうだったのに!」

モリリンが笑う。

「ヒカリン、うなぎ大好き!」

もう、誰にも止められない。

森村姫は、改めて上様に向き直った。

「上様。本日は私のみならず、
お供の者たちまでお招きいただき、
誠にかたじけのうございます」

そう言って、深々と頭を下げた。

なんとも謙虚な森村姫である。

しかし、その胸の内では……。
(ふふっ。今日も
美味しいうなぎがいただけるわ!)
そんな喜びが、こっそり顔をのぞかせていた。

さあ、いざ出陣!
目指すは紀州の鰻の名店、二与呂。

馬車道藩・森村姫と愉快な仲間たち。
上様にお供して、
いよいよ待ちに待った
鰻の宴へと向かうのであった。

さてさて、この珍道中。

まだまだ何が起こるかわからない。

— Morimura