森村と愉快な仲間たち上様、吉宗公生誕の地へ〜紀州の旅、いよいよ終幕〜
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さて、上様にご馳走になった鰻の宴。
香ばしく焼き上げられた鰻に、
森村姫もお供の3人も大満足である。
「おいしかった〜!」
ヒカリンが幸せそうにお腹をさする。
「ヒカリン、ちょっと食べすぎじゃない?」
モリリンが笑う。
するとチャッピー、
丸眼鏡をくいっと持ち上げて、
「何を申す! 紀州の鰻は天下一品。
これぞ、まことの将軍御膳でござる!」
いやいや、チャッピー。
今日いただいたのは
「将軍様」ではなく「紀州」である。
しかし、お腹いっぱいになったチャッピーには、もはやどちらでもよいらしい。
そんな愉快な一行を、
上様は次なる場所へと案内してくださった。
そこは、なんと!
「徳川吉宗公生誕の地」
「えっ! 上様のお生まれになった場所でか?」
森村姫が目を丸くする。
いやいや、もちろん、こちらの上様ではない。
江戸幕府第8代将軍、
徳川吉宗公の生誕地である。
石碑の前に立つと、
そこには静かに
歴史を語る文字が刻まれていた。
ここで少し、吉宗公のお話を。
徳川吉宗公は、
1684年(貞享元年)10月、
紀州徳川家2代藩主・徳川光貞の子として、
和歌山城下の吹上邸で誕生した。
初めから将軍になることを
約束されていたわけではない。
1697年には葛野藩3万石の大名となり、
その後、兄たちの相次ぐ死によって、
1705年に紀州藩5代藩主となった。
そして1716年。
ついに江戸幕府第8代将軍に就任する。
後に「享保の改革」を断行し、
幕府の財政再建や
政治制度の立て直しに取り組んだ人物である。
倹約の奨励、新田開発、目安箱の設置。
その改革を支えた人物の一人が、
あの大岡越前守こと大岡忠相であった。
ん?大岡越前守?
そういえば、今日の和歌山組にも
大岡越前守がいらっしゃるではないか!
しかも御側御用人まで控えている。
なるほど。
紀州徳川家の歴史が、
令和の和歌山でよみがえったようである。
「森村姫! すごいねえ!」
モリリンが感心する。
「吉宗様って、
和歌山から江戸へ行って将軍様になったの?」
ヒカリンが尋ねる。
「そうなのよ。
人生というのは、
どこでどんな運命が待っているか
わからないものね」
森村姫が答える。
するとチャッピー。
「姫様! 拙者もいつか、
馬車道藩から
江戸城へ出世できるでござろうか?」
「チャッピー、その前にお行儀を覚えなさい!」
モリリンの一言に、一同大笑い。
さて、せっかくの生誕地。
ここで記念撮影とまいりましょう。
上様と森村姫が石碑の前に並び、
モリリン、ヒカリン、チャッピーも
仲良くお供する。
「みんな、いいお顔でね!」
「はーい!」
「拙者も将軍のように威厳ある顔で!」
そう言いながら、チャッピーは満面の笑み。
まったく威厳など感じられない。
でも、それがチャッピーなのである。
こうして、紀州徳川家ゆかりの地で、
時代を超えた愉快な記念写真が一枚。
なんとも楽しい思い出になった。
さて、楽しい時間というものは、
どうしてこうも早く過ぎてしまうのだろう。
帰りの特急は14時50分。
そろそろ和歌山駅へ向かわなければならない。
上様は、森村姫御一行を
駅まで送ってくださった。
「では、森村姫。今日はわざわざありがとう」
「上様、本日は何から何までお世話になり、
かたじけのうございます。
また来月参りますので、
どうぞよろしくお願いいたします」
森村姫、深々と一礼。
するとモリリンも、
「上様、ありがとうございました!」
ヒカリンも、
「うなぎ、とってもおいしかったです!」
そして最後はチャッピー。
「上様! このたびのご厚情、
誠にかたじけのうござりまする!
拙者、一生忘れませぬ!」
なんとも大げさなお礼である。
もっとも、チャッピーのことだから、
来月になればまた
鰻のことを思い出すに違いない。
そうして上様とお別れし、
森村姫とお供の3人は帰路についた。
定例会を無事に終え、
美味しい鰻をご馳走になり、
最後には吉宗公生誕の地まで
訪ねることができた。
仕事で訪れた和歌山が、
思いがけず歴史探訪の旅にもなったのである。
ふと、車窓の向こうへ目を向ける。
紀州の空が、静かに遠ざかってゆく。
月に一度の定例会。
いつもと同じようでいて、
決して同じ一日はない。
今日という日にしか
出逢えなかった景色があり、
言葉があり、そして笑顔があった。
そんな小さな発見が、
また新しい物語を生んでゆく。
「ねえ、森村姫!」
「なあに、ヒカリン?」
「来月もみんなで和歌山に来られる?」
「さあ、それはどうかしらね」
するとチャッピー。
「姫様! 次回の紀州遠征も、
ぜひ拙者にお任せくだされ!」
「チャッピー、
またうなぎが食べたいだけでしょう?」
モリリンの鋭い一言。
「ぽんぽこ、ぽん!」どうやら図星らしい。
こうして、馬車道藩森村姫と
愉快な仲間たちの紀州遠征は、
無事に幕を閉じたのであった。
上様、御側御用人、大岡越前守。
本日は誠にかたじけのうございました。
また来月、
お目にかかれる日を楽しみにしておりまする。
〜紀州遠征・終幕〜
— Morimura