やっと帰ってきた。
10日にこの街を旅立ってから、
8日ぶりに戻ってきた。
時刻は16時30分。

ああ、疲れた。
本当に疲れた。

考えてみれば、
今朝は2時13分に目覚めたのだった。
冬の大三角に魅せられ、
オリオンの帯と剣をたどり、
その先に広がる大星雲の神秘に心を奪われた。

群青の空に星を追い求め、
夜と朝のあわいを過ごした、
あの美しい時間。

あれから和歌山へ向かい、月に一度の定例会。
上様にお迎えいただき、
美味しい鰻をご馳走になり、
吉宗公生誕の地までご案内いただいた。

そして、ようやく戻ってきた。

「モリリン、ヒカリン、チャッピー……」

「はーい!」

「私、もう疲れちゃった。歩けない……」

「ええっ!」

モリリンが心配そうに顔をのぞき込む。

するとヒカリン。

「あっ! いいこと思いついた!」

「なあに?」

「森村さん、白いキャリーケースに座って!
私たちで押してあげる!」

おお!
なんとも素晴らしい提案ではないか。
チャッピーが丸眼鏡をくいっと持ち上げる。

「姫様! このチャッピーにお任せくだされ!
紀州の鰻で力は満タンでござる!」

こうして森村姫は、
白いキャリーケースの上へ。

「ふう……」肩を落とし、ぐったり。

「さあ、出発進行!」

「よいしょ! よいしょ!」

「えいっ! えいっ!」

「ぽんぽこ、ぽん!」

元気いっぱいの3人とは対照的に、
森村姫は今にも眠ってしまいそう。
ところが……。

「みんな、聞いて。
実は17時から家族と食事なの……」

「えええっ!」

「もうすぐ17時じゃない!」

「そうなのよ……」

「何を食べるの?」

「焼肉……」

その瞬間、ヒカリンの目が輝いた。

「やったー! 焼肉だー!」

「ヒカリン! 森村さんは疲れてるのよ!」

モリリンがたしなめる。

するとチャッピー。

「姫様、ご安心くだされ!
焼肉は拙者が責任を持っていただきまする!」

「チャッピー!!」

またまた3人の大騒ぎ。

まったく、
どこまでも食いしん坊なチャッピーである。

思わず笑ってしまった。

今朝は群青の星空。
昼は紀州の歴史。
そして夕方は、見慣れた街の空。
一日の中に、いくつもの世界があった。

そして今、家族の待つ場所へ帰ってゆく。
8日ぶりの再会。
疲れているけれど、やっぱり嬉しい。

今夜は久しぶりに家族と食卓を囲み、
明日19日も自宅で過ごせる。
そう思うと、少し心が軽くなった。

「ねえ、チャッピー」

「はい、姫様!」

「もう少しゆっくり押してくれる?」

「ははっ! 承知つかまつった!」

「どうして?」
 ヒカリンが尋ねる。

「だって、
もう少しだけ座っていたいんだもの……」

するとチャッピー。

「では姫様!
明日の朝までお運びいたしまする!」

「チャッピー!
それじゃ焼肉に間に合わないじゃない!」

モリリンの一言に、みんな大笑い。

こうして、
森村姫と愉快な仲間たちの8日ぶりの帰宅は、
なんとも賑やかなものとなった。

さあ、次は家族との焼肉の夕べ。
果たして、疲れ果てた森村姫は、
無事に焼肉をいただくことが
できるのであろうか。

そして、食いしん坊チャッピーの運命や、
いかに!

本日の物語、まだまだ続く。

— Morimura