ビスカウトクラブ|今宵、あなたに一杯の物語を〜新装オープン・夢の扉が開く夜〜
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街に夕闇が降り始める頃。
ひとつ、またひとつと、
建物の窓に灯りがともり、
昼間の賑わいが静かに遠ざかってゆく。
そんな街の一角に、
今宵、新しい扉が開こうとしていた。
その名は、『ビスカウトクラブ』
今宵、あなたに一杯の物語を。
ビスカウトといえば、港町の小さなお菓子。
かつて横浜の三塔に想いを巡らせていたとき、
私の心の中に生まれた『ビスカウト王国物語』
そこには王様がいて、女王様がいて、
夢と遊び心に満ちた世界が広がっていた。
そして今夜。
その王国から、
もうひとつの新しい物語が
生まれようとしている。
扉を開けると、
そこには広く奥行きのある
クラブラウンジが広がっていた。
控えめな照明。
ゆったりと配置されたボルドー色のソファ。
それぞれのテーブルには、
琥珀色の小さな灯り。
磨き上げられたグラスが、
柔らかな光を受けて静かに輝いている。
どこか懐かしい、昭和のクラシカルな品格。
けれど、
そこには新しい時代の息吹も感じられた。
ここは、ただお酒を楽しむだけの
場所ではない。
忙しい一日を終えた人が、
ほんの少し肩の力を抜き、
自分自身の時間を取り戻すための場所。
誰かと語り合いたい夜もあれば、
静かにグラスを傾けたい夜もある。
そんな、それぞれの心模様を
優しく受け止める、大人の社交場なのである。
さて。
このクラブには、
ひとりのホールレディがいる。
その名は、森村。
今宵は、いつもと少し違う装い。
黒と白を基調にした、
クラシカルなバニー衣装。
頭には、愛らしいうさぎの耳。
華やかさの中にも品格を忘れない、
少しだけ遊び心を添えた装いである。
片手には銀色のトレー。
美しいグラスを載せ、
ゆっくりとホールへ歩み出す。
私は、このクラブのママではない。
あくまでも、ホールレディ。
お客様をお迎えし、お席へご案内し、
心を込めて一杯のグラスをお届けする。
けれど、そのグラスに注がれているのは、
お酒だけではないのかもしれない。
懐かしい思い出。
心に秘めた小さな願い。
忘れられない出逢い。
そして、誰にも話せなかった、
ほんの少しの寂しさ。
人は誰でも、自分だけの物語を持っている。
そして、その物語は、
誰かと出逢うことによって、
思いがけない続きを魅せることがある。
私がこのクラブに託したかったのは、
そんな時間だった。
一杯のグラスを挟んで交わされる言葉。
ふと目が合った瞬間の微笑み。
そして、ときには言葉よりも雄弁な沈黙。
そんな何気ないひとときの中にこそ、
人の心を満たす何かが
隠れているような気がする。
さて。開店の準備は整った。
琥珀色の灯りが揺れ、
ボルドーのソファが、
まだ見ぬお客様を待っている。
私は銀色のトレーを手に、
そっと姿勢を正した。
そのとき。ふいに、
入り口の扉が開く気配がした。
ゆっくりと振り返る。
そして、いつものように微笑んだ。
「いらっしゃいませ」
初めて口にする、このクラブでのご挨拶。
なんだか、少しだけ胸が高鳴る。
「ようこそ、ビスカウトクラブへ」
今夜、ここでどんな物語が生まれるのだろう。
まだ何もわからない。
けれど、そのわからないことこそが、
何よりも楽しみなのである。
どうぞ、お好きなお席へ。
時間を忘れ、心の赴くままに。
そして、もしよろしければ、
あなたのお話を少しだけ聞かせてください。
私からも、ささやかな物語をひとつ。
今宵、あなたに一杯の物語を。
新しい出逢いに、心からの乾杯を。
ビスカウトクラブ。
ただいま、新装オープンでございます。
— Morimura